今季絶好調の“パパスイマー”小関也朱篤 まだ見ぬ我が子へ誓うメダルへの想い
胸に響いた渡辺一平の世界新
「意地とプライドを持って」と、8月にパパとなる小関は語った 【写真:築田純/アフロスポーツ】
「出すだろうなと思っていましたが、見た時は確かに『おおっ』ってなりましたね。ちゃんと練習しないとダメだなと思ったのと、それなりに意地とプライドを持っていかないとと感じました」
渡辺の実力は以前から認めていたが、自身も狙っていた世界新だけにさすがに胸に響いた。
「このままではまずいなと思ったので、3月の合宿で急ピッチに調整をして4月の日本選手権に臨みました。すごくきつい合宿でしたが『ここで踏ん張らないといけないな』という気持ちにさせてくれたのは渡辺君でした。彼とは2人で高め合って、ライバル関係をこのまま築いていって、まずは今年の世界水泳でいいタイム、いいメダルをお互いに取れたらなと思います」
普段は人見知りで「休日は家でゲームばかりしています」とシャイな小関だが、近頃は取材時に「負けていられない」と感情をあらわにするようにもなった。それは渡辺の世界新に加え、別の出来事が関係している。
夫人の妊娠が判明したのだ。出産予定日は世界水泳直後の8月で、気持ちはすでに日本代表で唯一のパパスイマー。今大会への士気はいや応なしに高まっている。
「もちろん負けたくないですが、子どもが生まれるので父親としていい姿を家族に見せたい。両方が入り混じっていて、うまく言い表せないのですが、何色でもいいからメダルがほしいです。(相手を)つぶしてでも取りにいく、くらいの気持ちがあります。子どもにメダルを掛けて写真を撮りたいんですよ(笑)」
好調な今季、調整も順調
今季は日本選手権で3冠を達成するなど好調。世界水泳へ向けて期待が高まる 【写真:築田純/アフロスポーツ】
夏の本番に向けた準備も順調だ。6月上旬に行ったヨーロッパ遠征直後には「僕はこの時期はもっと遅いのですが、わりと速いタイムでまとめられているのでいいと思います」と好調ぶりをアピール。帰国後は藤森コーチの下、最終調整を続けている。
世界水泳が近づくにつれ夫人のお腹も大きくなり、「妻への感謝、家族への思いというものが僕の中でいいプレッシャーになっています」と話すが、日本でも有数の過酷さを誇る日体大のトレーニングをこなす上での励みにもなっている様子。
「大学のプールはかなり日差しも強くて日焼けをすると思う。学生のフレッシュな力をもらいつつ、甘えを一切捨てて頑張ります」
日焼けした肌は努力の勲章となる。最後に世界水泳への意気込みを問うと笑顔でこう答えてくれた。
「東京五輪の時には子どもが3歳くらいなので、自分の親父が何をやっているのか記憶に残ると思う。まずは東京五輪を目指す上でも、今年の夏にしっかりと結果を出さなければいけないですね」
生まれたばかりの子どもにメダルを掛けてあげるために、真っ黒に日焼けした小関が負けられない世界水泳を迎える。
(取材・文:澤田和輝/スポーツナビ)