もはや「神ってない」広島の強さ―― 前半戦独走首位ターンの戦いぶりを分析

ベースボール・タイムズ

7月7日のヤクルト戦で、9回に代打逆転3ランを放った新井(右)を出迎える緒方監督 【写真は共同】

 セ・リーグ連覇に挑む広島の勢いが止まらない。連敗スタートとなった前半戦最後の9連戦も5勝3敗1分けで乗り切り、52勝29敗2分け(勝率6割4分2厘)で2位・阪神に8ゲーム差と首位を独走。勝率では昨季の52勝33敗2分け(同6割1分2厘)を上回る成績でオールスターブレークを迎えた。この快進撃の理由を、改めて振り返りたい。

若手が期待通りに埋めた黒田の穴

 リーグ連覇、そして昨季は達成できなかった日本一を目指してスタートした今季の広島。最大の懸念材料は、黒田博樹氏の抜けた投手陣だった。現役最後の昨季も10勝した数字以上に、投手陣の精神的支柱だった黒田の不在が、若手中心の投手陣に対する影響は少なくないと思われた。昨季、最多勝のタイトルを争った野村祐輔、ジョンソンに続く先発は誰になるのか。候補は多いが、2年続けて数字を残した投手がおらず、期待値ばかりが先立った陣容だった。

 そんな状況の中、開幕戦で登板したジョンソンが咽頭炎で早々に戦線離脱してチームはいきなりの窮地に陥ったが、ここでその期待値が現実のものとなる。ポスト黒田の最右翼と言われた大瀬良大地は、ここまで14試合に先発して5勝0敗と復活の兆しを見せ、2年目の岡田明丈はリーグ5位タイの7勝(4敗)をマーク。そしてダークホースとも言えるのが、3年目の薮田和樹で、当初はリリーフからスタートしたが、好投を続けて交流戦から先発ローテ入りし、チームトップの8勝と大ブレークを果たした。

 その他、先発では、4、5月に4勝した九里亜蓮や、5、6月に3勝を挙げた中村祐太、デビュー戦で9回1死までノーヒットノーランの快投を演じたドラ1ルーキーの加藤拓也ら、スポット的に若手投手が次々と結果を残した点も大きかった。

崩壊状態から立て直したブルペン

 リリーフ陣では、昨季34セーブを記録したクローザーの中崎翔太が開幕してわずか2週間で腹部の違和感で離脱した。また、昨季は勝利の方程式の一員で、先発でも活躍したヘーゲンズも不調で2軍暮らしが続き、5月6日の阪神戦では9点リードから逆転負けを喫するなど、一時は崩壊状態の危機に陥った。

 この状況で存在感を見せたのが、一岡竜司や中田廉ら、近年は故障に苦しんだ実績組のリリーバーだった。先発から配置転換した九里も含めて、ビハインドの展開やロングリリーフで好投し、勝ちゲームに結びつけた。昨季からのセットアッパーであるジャクソンに加え、クローザーには経験のある今村猛を起用し、5月に復帰した中崎も含めて新たな勝利の方程式も確立した。現在は疲れが見えてきたジャクソンが「8回の男」から外れているが、誰かが不調ならば、他の誰かがカバーする、という投手起用のやり繰りも功を奏している。

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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