変化を遂げた鹿島がセビージャを迎え撃つ 決戦を前に、昌子と中村が抱く思い

田中滋

1週間で3試合、“超過密日程”でもブレない姿勢

鹿島は1週間での3連戦を2勝1分けという好成績で乗り切った 【(C)J.LEAGUE】

 どんな試合でも、どんな相手でも、常に勝機をつかむ糸口を探して勝つことを目指す――。それは、“開闢(かいびゃく)の祖”であるジーコが鹿島に植え付けた哲学であり、ジーコがクラブを離れた今でも連綿と受け継がれている戦い方だ。

 その姿勢はつい先日のリーグ戦でも垣間(かいま)見えた。AFCチャンピオンズリーグに出場していた鹿島は、未消化だった第13節をミッドウイークに挟み、1週間で3試合という“超過密日程”を戦った。しかも、そのすべてがアウェーゲームだった。

 連戦の1戦目となった柏レイソル戦(3−2)に続き、ガンバ大阪(1−0)との上位対決を連続して制したものの、3戦目のFC東京戦では先制しながら逆転を許す苦しい展開を強いられた。それでも選手交代で流れを引き戻すと、ペドロ・ジュニオールがゴール左からGKの手を逃れるように曲がるミドルシュートをたたき込み同点に。その後も攻め続け、あと一歩で勝利をつかむ大熱戦となった。

「全ての試合で勝とう」と言うのは簡単だ。しかし、自分たちよりも強い相手に勝つ方法や、コンディションが良い相手に勝つ勝ち方が示されなければ、「絵に描いた餅」で終わってしまう。

 その点、シーズン途中でチームを引き継いで以来、大岩監督は一貫した姿勢を取っている。まずは、選手たちに積極的な姿勢を求める。

「基本的に、要求することは誰に対しても変わらないです。ゲームに関しては積極的にいく。パス&ゴーもそうですし、フリーランもそう。あとは中盤でシンプルに動かす、味方を信じてテンポ良く動かす。それは、自分たちがファイナルサードで良い攻撃をするための準備ですし、そういったアプローチの仕方は変わりません」

大岩監督が目指すチーム像は、さらに高いレベルに――

大岩監督(左)就任後、公式戦7試合で奪った得点は19。鹿島は「攻撃的」に生まれ変わった 【(C)J.LEAGUE】

 そこからは監督を中心としたコーチングスタッフの仕事だ。

「配置やポジションに関して、選手にやってもらうポジションで、どこが適正なのかを見極めるのは僕たちの仕事です。右なのか、左なのか、前なのか、後ろなのか。当然、トレーニングの中で求めることと、彼らが発揮しやすいところを見つけなければいけない。

 あとは選手を信じてあげることですよね。それは、どの選手に対しても同じように信じていきますし、『思い切りやれ』と送り出すつもりです。そういった精神的な部分とテクニカルな部分と、両方ありますので自信を持って送り出すことを重要視しています」

 前述のFC東京戦でも、過密日程を言い訳にせず、その条件の中で最善の準備を進め、勝利を目指す戦いを見せた。大岩監督が就任して以降、公式戦は6勝1分けと昨季のクラブW杯を彷彿(ほうふつ)とさせる強さが戻ってきた。

 しかし、大岩監督が目指すチーム像はさらに高いレベルにある。

「もっと積極的に、もっとアグレッシブに。リスクを冒してでも、少しでも攻撃的にいっていいのではないか」

 大岩監督就任後、公式戦7試合で奪った得点は19。攻撃的に生まれ変わった鹿島が、セビージャに対しても牙をむく。

2/2ページ

著者プロフィール

1975年5月14日、東京生まれ。上智大学文学部哲学科を卒業。現在、『J'sGOAL』、『EL GOLAZO』で鹿島アントラーズ担当記者として取材活動を行う。著書に『世界一に迫った日』など。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント