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復活の鈴木聡美、26歳にして再び進化
五輪メダリストの重圧は過去のもの

 水泳の世界選手権(以下、世界水泳)が7月14日、ハンガリーのブダペストで開幕した。競泳(23日〜30日開催)の日本代表に選ばれた、全25選手の大会への思い、これまでのストーリーとは。全25回連載の最終回は、平泳ぎの鈴木聡美(ミキハウス)を紹介する。


■鈴木聡美を知る3つのポイント

・ロンドン五輪では日本女子史上初となる1大会3つのメダルを獲得。

・今季は50メートル平泳ぎで日本記録を樹立するなど好調を維持している。

・パワーを生かした泳ぎが持ち味だったが、リオデジャネイロ五輪(以下、リオ五輪)後は瞬発系のトレーニングに重点を置く

突然組み合わさったパズル

五輪メダリストとしての重圧から放たれ、鈴木聡美は輝きを取り戻した
五輪メダリストとしての重圧から放たれ、鈴木聡美は輝きを取り戻した【写真:築田純/アフロスポーツ】

 世界水泳に臨む日本代表の選考会を兼ねた4月の日本選手権。50メートル平泳ぎの決勝を泳ぎ切った鈴木聡美は、水しぶきをあげるほどの力強いガッツポーズを見せた。


 誰よりも速いスタートで飛び込むと、力強いストロークとキックでグングン前へ進む。その力強さとは対照的に、キックを打った直後の伸びはゆっくりとして美しい。たたき出したタイムは日本新記録となる30秒66。同種目では3年ぶり5度目の優勝だった。


「ここまで鍛え上げてきたパワーを出し切ろうと思いました」


 26歳の鈴木が競技生活で積み上げてきたもの。それが突然パズルのように組み合った。


 大学4年で初出場した2012年ロンドン五輪で銀メダル1つ(200メートル平泳ぎ)、銅メダル2つ(100メートル平泳ぎ、400メートルメドレーリレー)を手にした鈴木。1大会で3つのメダルを獲得するという日本競泳女子史上初の快挙に一躍注目を浴びた。しかしその後は思うようにタイムが伸びず、15年の世界水泳(カザン)では代表落ち。なんとか代表入りを果たした16年リオ五輪は、個人種目では100メートル平泳ぎ1種目のみに出場するも、準決勝敗退に終わった。選手としてのキャリアが下降線をたどる中、かえって五輪メダリストの重圧から解放された鈴木は、日本選手権の舞台で輝きを取り戻した。

26歳だから、まだこれから伸びる

リオ五輪後からは瞬発系のトレーニングなど新しい取り組みにチャレンジしている
リオ五輪後からは瞬発系のトレーニングなど新しい取り組みにチャレンジしている【写真:築田純/アフロスポーツ】

 好調の兆しは大会初日から感じられた。100メートル平泳ぎでは、予選から自己ベストに0.33秒差の1分6秒65という好記録をマークし、全体1位で決勝へ進出。「練習でキックのあたりもよく、伸びた時のすべりも非常に良かったので、練習の泳ぎを思い出しながら慎重に泳ぐことができた。自分でもびっくりしています」と手応えを語っていた。決勝こそ所属が同じライバル青木玲緒樹に敗れ2位だったものの、100メートルでの泳ぎが、50メートルでの新記録につながった。


 鈴木といえば169センチの体格を生かし、力強く水を捉えるパワー派のスイマーだった。しかし、リオ五輪後からは瞬発系のトレーニングに励んだ。「今まで鍛え上げた筋肉をどううまく生かすか、最大出力をどのポイントで出せるかというのを取り組んできました」と自身でも変化を語る。


 以前は長水路の平泳ぎで50・100・200メートルの日本記録を保持していた実力者である。日本選手権で記録を一つ取り戻し、5月のジャパンオープンでは100メートルでも青木や海外選手を抑えて優勝と、高々と復活ののろしをあげている。


「『26歳だからまだこれから伸びるね』と、トレーナーにさらっと言われたんです」


 こう笑顔で語った鈴木のまなざしは鋭く輝いていた。その目には、一度も上がったことがない世界水泳の決勝の舞台が映っていたはずだ。


(文:澤田和輝/スポーツナビ)

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