激戦区・大阪を勝ち上がるために――履正社・安田尚憲、最後の夏への覚悟

沢井史

野球だけではなく勉強も常に全力

安田は“東の清宮、西の安田”と称される高校球界屈指のスラッガー。今春のセンバツでも一発を放っている 【写真は共同】

 何より本人が最も細心の注意を払っていたのは、技術面ではなく日々の過ごし方だ。

「いくら、プロの方から注目していただいていても、生活面が中途半端だったらどうしようもない。“お前、それでプロに行くの?”と言われるような生活態度ではダメです。普段の生活の仕方が野球にもつながっていくと思いました」

 学校での授業態度はもちろん、普段から小テストが多いため帰宅すれば勉強のために机に向かう時間も多かった。練習に対する姿勢も常に全力。タイミングの取り方や打撃フォームを変えるなど、失敗を恐れずに進化を求めて果敢に取り組んだ。春以降、季節の変動があっても、ベスト体重をキープし自己管理も徹底。そんな中、逆方向への打球が飛ぶ確率が上がるなど、これまでになかった打球も見受けられるようになり、“量より質”を見据えた練習の成果は着実に表れている。

バットで投手陣を援護できるか

 そして、いよいよ最後の夏を迎える。

「昨夏は寺島さん(=成輝/東京ヤクルト)に引っ張ってもらって勝てた試合ばかり。特に大阪大会は大勝が多くて、接戦がほとんどなかったんです。この夏は厳しい試合が多くなると思いますが、それが夏の大会なんだと思います」と、手綱を締める。

 センバツ以降、体調を崩しマウンドから離れていたエースの竹田祐も徐々に復活。控え投手も練習試合で経験を積んだものの、今年は右の強打者・若林将平らとともに投手陣をいかにバットで援護できるかも最大のテーマだ。

「大阪大会は1回戦からなので、決勝まで行くとなると8試合を戦わないといけません。だから、ピッチャーの負担を軽くするために自分たちが打たないと。試合を重ねて、チームとしても成長しながら勝っていけたらと思います」

 万全を期して、まずは14日の初戦(常翔啓光学園戦)へ。そして夏は9連敗中のライバル・大阪桐蔭への挑戦への思いも強い。静かな春を過ごしたスラッガーは、この夏きっと周囲を驚愕させるような姿を見せてくれるはずだ。

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著者プロフィール

大阪市在住。『報知高校野球』をはじめ『ホームラン』『ベースボールマガジン』などに寄稿。西日本、北信越を中心に取材活動を続けている。

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