センバツ準優勝校・履正社の現在地 “正念場”の夏に向けての課題とは!?

沢井史

春の府大会は5回戦敗退

春のセンバツは準優勝だった履正社。春の府大会は5回戦で早々と敗退し、若林主将を中心に夏へ向けて日々課題克服に取り組む 【写真は共同】

 大阪大会のメイン球場でもある舞洲ベースボールスタジアムで春の近畿大会決勝(大阪桐蔭vs.東海大仰星)が行われていた日、履正社ナインは自校のグラウンドで練習試合を行っていた。相手は昨春センバツ優勝校の智弁学園。つまり、昨春の近畿大会決勝と同じカードでもあった。試合は壮絶な打ち合いの末、14対16で敗戦。

 試合後、若林将平主将はこう言った。

「今のままでは夏はまだまだです」

 センバツ準優勝後、府大会の5回戦では東海大仰星との壮絶な打ち合いの末、8対9で敗れた。エースの竹田祐は登板せず、投手陣の底上げをテーマにこの春は何とか勝ち上がってきたが、最後は力尽きた。

「投手陣の実力もそうですが、あの試合は投手を含めたディフェンスのもろさが出ました。細かいミスが多かったし、それが失点につながっていましたから。秋は何とかなっていたことも、春はそううまくはいきません。今はずっと当たり前のように出ていた選手を試合で外しています。このままではいけないということを自分でも気づかないと。力のある1年生もいますし、危機感をもってやらないといけないです」

 岡田龍生監督はそう言ってグラウンドに目をやった。昨秋は公式戦続きだったため、新しい力をなかなか試す時間がなかった。そのためこの春の敗戦後の練習試合では野手も含め、とにかく選手を競争させている。新戦力をAチームの試合でも積極的に起用。「春までずっとAチームだった子が、今ではBチームにいることもあります。打順も結構変えながら色々なことを試しています」と指揮官は言う。

勝つために大事なのは「強い気持ち」

センバツでも本塁打を放った注目のスラッガー・安田は春の府大会を「力負け」と振り返る。夏へ向けての巻き返しなるか!? 【写真は共同】

 毎週土曜日は午前中に授業があるため、土曜日は試合ができるとしても午後からの1試合のみ。決してたくさん練習試合をこなせている訳ではない。だが、昨秋なかなか出来なかった練習試合を重ねながら、ナインは夏に向けて、さまざまな課題に向き合っている。

 現在は通算本塁打数を57本に伸ばした安田尚憲は、センバツ後についてこう話す。

「センバツが準優勝で終わって、大阪大会に入ってから気が緩んでいた訳ではないけれど“大阪大会は勝てるだろう”みたいな雰囲気があったかもしれません。もちろんセンバツの結果に満足していた訳ではないし、油断をしていた訳でもないです。でも、結果的に負けたのは自分たちに足りないものが多いからだと感じました。自分たちがセンバツに出るために良い思いをしている間に、大体大浪商や東海大仰星や上宮太子は夏の前にまず春に勝つという思いで冬の練習をしてきた。そのあたりの気持ちの差もあったと思います」

 東海大仰星との試合を、安田は”完全な力負け“と振り返る。ヒット数は履正社の方が多く、自身もホームランを含む4安打を放った。ただ、打ちまくることはできても何かが足りない。ミーティングを重ねる中で、やはり大事なのは勝つための”強い気持ち“だと気づく。その強い気持ちをチームで統一できるかも重要だ。

「技術をいきなり上げるのは難しいので、普段の生活から気づいたことはどんどん進んでやっていくようにしています。それでもこの間、グラウンドの戸締りを忘れた選手がいて、注意されたことがありました。全体でそういうところをなくしていかないと、試合でもうっかりミスが出てしまいます」と若林主将。そういったほころびを、いかにどうなくすか。ミスは故意的に起きる訳ではないが、心にスキが生まれれば当然ミスも起こりうる。

ライバル大阪桐蔭との比較

 そしてやはり話題にのぼるのが、ライバルと自分たちの現在地だ。今年はセンバツの決勝戦で対戦したため、大阪桐蔭との“比較の目”が一層強い。ただ、この2チームは対照的な環境、そしてチームカラーが故に、戦い方にもくっきり違いが現れる。

「自分たちはおとなしいというか、対戦をしても雰囲気から押されているような気はします。センバツの決勝で8回に追いついた時、自分たちはそこから勝ち越せないまま9回表を迎えて、先頭打者をヒットで出塁させてしまって。そこから一気に点を取られた時に大阪桐蔭の底力を見たし、自分たちより一致団結している空気も感じました。(キャプテンの)福井(章吾)を見ていても、自分とのキャプテンとしての力の差を感じます」(若林主将)。

 個々の性格やカラーが違う以上、相手と同じことをしたり、まねをする必要はない。“夏に勝ち抜く”という強い思いは同じだ。ただ、履正社として、この夏徹底していくべきことは何なのか。「まずは自分が尊敬される存在になりたい」と話したうえでキャプテンはこう見据えている。

「夏はミスをしたら負けなので、どんな場面でも余裕を持ってプレーできるような準備をしていきたいです。それに自分たちは練習時間が(大阪桐蔭に比べて)短い分、グラウンドを離れても野球のことを考えていかないといけないです。あとは気持ち。打席に入っても、相手に圧倒されていると感じた時点で、気持ちで負けていると思います。春の結果を受け止めて、夏はチャレンジャー精神で戦っていくだけです」

 大阪桐蔭が圧倒的な力で春の近畿大会(18対0で勝利)を制したニュースを知り、選手たちは「さすがやな」と口々に話していた。この結果が彼らの心をどう動かしていくのか。そして自分たちがどう変わるのか。“正念場”となる夏は、もうすぐそこまで来ている。
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著者プロフィール

大阪市在住。『報知高校野球』をはじめ『ホームラン』『ベースボールマガジン』などに寄稿。西日本、北信越を中心に取材活動を続けている。

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