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大河チェアマンが語る「お金」の話
Bリーグ初年度を振り返る 経営編(1/2)
大河チェアマンに経営目線でBリーグ初年度を振り返ってもらった
大河チェアマンに経営目線でBリーグ初年度を振り返ってもらった【スポーツナビ】

 男子バスケットボールのトップリーグが一つになったことを喜ぶ時期はもう終わった。「プロvs.実業団」といった構図で盛り上がる日々も間もなく終わるだろう。すでに前向きなチャレンジが軌道に乗り始めているからだ。


 Bリーグは2016年9月22日のアルバルク東京vs.琉球ゴールデンキングス戦で開幕し、17年5月28日のB1・B2入替戦にて初年度の全日程を終えた。開幕戦、オールスター、ファイナルと言った大一番は確かな盛り上がりを見せ、コート外も含めて明るい話題を世の中に提供した。「今シーズンからバスケを見始めた」というスポーツファンも、少なくないはずだ。


 一方で鹿児島レブナイズ(B2)の経営危機はネガティブな事態だったし、各クラブの経営規模も野球やサッカーに比べて発展途上。日本バスケ全体の行く手を見れば19年のワールドカップ出場、20年の東京五輪出場といった高い壁もある。


 今回はBリーグの陣頭指揮を執った大河正明チェアマンにリーグの現在地と今後の課題、希望を語っていただいた。インタビューの前編ではクラブ経営や選手の年俸といった「お金」の話が率直に述べられている。いまだ「要注意」の状況にある一部クラブの実情も説明があった。(取材日:2017年6月26日)

B1クラブの平均年間収入は推定7億円前後

――Bリーグ初年度の経営的な結果もある程度、見えている時期だと思います。各クラブの実績について、見込みはいかがですか?


 6月決算のクラブが多いので、まさにここから集計に入ります。(見込みの部分や今後の確認が残っているため)実際に出てくるものと多少ずれるのはご勘弁ください。また旧企業チームは新しく運営会社を作ったため、決算期が(12カ月でなく)10カ月で終わっている例もあります。10カ月で5億円みたいな例もあるので、それも「1年やったとして」と引き延ばして考えます。


 その上で(B1クラブの平均年間収入は)7億円前後ではないかなと推定しています。最大と最少の比較で言うと、1年単位で10億円くらいいったチームがあり、一番下は4億円くらいと想定しています。


――B2はいかがでしたか? クラブごとの格差を指摘する声もありました。


 鹿児島という例外はありましたが、他は(ライセンスの条件だった年間収入)1億円を超えました。上は3億円くらいいっているのではないでしょうか。2倍、2.5倍の差は、ある意味で仕方がない部分がある気もします。


 1万人のアリーナを本当に埋めるようなチームが出てきたら、どうやっても追いつかないところも出てきます。上がどんどん伸びていくと戦力差が拡大するから不公平という理由でサラリーキャップ(年俸総額上限)をかけたりすると、全く(成長とは)逆行してしまう話になる。


 KBL(韓国バスケットボールリーグ)は韓国人選手のサラリーキャップがあります。日本円で言うと2億5000万円ですから、韓国人選手の年俸は1人平均で2000万円以上あるんです。サッカーや野球は日本の方が高いのに、バスケは逆なんですよ。そこを解消するのが先決だと考えています。


――大河さんはJリーグの常務理事も務めていたので比較をお願いしたいのですが、J1とB1を比べると規模感はどれくらい違いますか?


 先シーズンのJ1は(1クラブの平均収入が)37億円くらい。その前が33億円ですから、おおよそ30億円半ばですよね。そういう意味で言うと、5分の1くらいです。


 プロスポーツにとって、一番お金がかかるのは選手への投資です。「選手1人当たりの生産性」を僕らは一つの指標にしています。どういう意味かというと、プロ野球は一球団で70人の選手を抱えていますよね。サッカーだと30人ちょっと。バスケは(プロ契約の)上限が13名だから、12人か13人。


「70人」「30人ちょっと」「12〜13人」をベースに置くと、プロ野球は70人で130〜40億円稼いでいると思われます。サッカーは30人ちょっとで30億円の半ばくらい稼いでいます。B1は12〜3人で7億円と仮定します。1人の選手が稼ぎ出している売り上げは野球が大体2億円、サッカーが1億円、バスケは5000〜6000万円ということですね。そこは日本人選手の平均年俸と強い因果関係があると思っています。


 プロ野球選手の日本人選手の平均年俸は約4000万円と聞いていて、J1の日本人選手の平均年俸は大体2000万円。B1の今季の平均年俸は1000万円を少し超えるくらいの水準だと見ています。出場給、勝利給などを全て足した年俸として、それくらいの額になると想定しています。


――Bリーグの収入に占める人件費比率は野球、サッカーと一致していますか?


 似ています。選手人件費は大体3割前後です。コーチやスタッフを入れると40%、45%くらいまでいきますが、選手人件費は30%くらいで、サッカーの世界もバスケの世界も一緒です。

年俸をもらっている日本人選手は5000万円強

クラブの収入内訳は、スポンサー料が40〜50%を占めているという
クラブの収入内訳は、スポンサー料が40〜50%を占めているという【加藤よしお】

――クラブの収入内訳はどうなっていますか?


 一般的にはスポンサー料が40〜50%です。チケット収入が20〜30%くらいです。それで合計70〜80%いって、リーグからの分配金やスクール、グッズの収入。自治体からの委託事業費などが入って100%になる感じです。


――Bリーグとして「東京五輪までに1億円プレーヤーを出す」という目標を掲げています。日本人選手で今一番年俸の高いプレーヤーはどれくらいの金額になっているのでしょうか?


 もらっている選手は5000万円強。5000万円から6000万円だと思いますね。外国籍選手はもう少し高い例があります。(年間の売り上げが)10億円を超えるチームも出始めていますから、払おうと頑張れば1億円払える体力はついているんです。ところが誰に1億円払えばいいかといったときに「あの選手だよね」とみんなが思える選手が生まれるためには、代表での活躍も大切ですね。


――bjリーグ、NBL時代はサラリーキャップがあって、bjは6800万円の上限を使い切ってないクラブが大半だったと聞いています。Bリーグは上限でなく逆に最低年俸額(B1が300万円、B2が240万円)を設定しました。最低年俸ぎりぎりに張り付いている選手はどれくらい残っているんですか?


 B1は新人やほとんど出場時間のない選手を除くと、チームによりますけれど、下限の選手がそんなにいるとは認識していません。


――旧リーグの時代に比べて、仮にB1でいうと年俸の総額はどれくらい増えたんですか?


 正確には難しいですが、NBLは1億5000万円のサラリーキャップでした。NBLはキャップがかかっているのが基本給なんです。よって勝利給などのインセンティブ給を多くしているチームは結構もらっていたりするんですよ。基本は300万円と言っておきながら1試合勝つと何十万円とやっていくと、1000万円近くまでいったりします。ただ基本的には1.5倍くらいの事業規模になっているわけですから、選手の年俸も大体パラレル(並列)ですね。2年前に比べたら倍ですよ。15−16シーズンと比べると1.5倍だけれど、Bリーグが影も形もなかった14−15シーズンに比べると倍にはなっていると思います。


――Jリーグは最初に大きなブームがあって、3年目付近から経営的に厳しくなりました。Bリーグも2年目、3年目の失速を懸念するファンがいます。Jリーグを振り返ると開幕直後はお金も使い方が派手でした。Bリーグに関してそういう過大な出費は……。


 ないですね。Jリーグはチームとしては一斉にプロになったわけじゃないですか。1993年、94年から95年の真ん中くらいまでが最初のピークでした。チケットは何もしないで売れてしまうような局面が最初の1〜2年はあって、(経営的に鍛えられず)失速するべくして失速した部分があった。Bリーグの各クラブはチケットを売るにしても(bj、NBL時代から)苦労してきたので、業績が2割3割と大きく減ってしまうことは絶対にないと思います。


――開幕前にも「非連続の成長を目指す」とおっしゃっていましたが、昨季の実績はそれを実現できましたか?


 総入場者数が40数%、B1に限ると約50%の増加でした。それから、B1は総収入が50%くらい増えるだろうと推定しています。サービス業、一般企業になぞらえて言うと5割のお客さんが増えて、売り上げも平均で5割上がるということですから、そこは非連続と言っていいんじゃないかと思っています。


――事前の予想値、目標値に比べるとどうだったのでしょうか?


 どこに売り上げを置くのかは難しいですよ。しかし漠然とだけれども、前年の1.5倍くらいになればいいなと思っていました。という意味で言うと、総入場者数はほぼ合格です。ただ試合数が増えているので、1試合平均は2800名弱くらいで、5割まで少し届かなかった。(B1の平均入場客数が)3000人くらいまでいっていれば、それなりの成果と言えるでしょうから、大成功とは言わないけれど、ある程度の成功と言えるのではないかというのはそこを指して言っているつもりです。

大島和人
大島和人

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都町田市に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。バスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、バレーなどの現場にも小まめに足を運び、試合観戦数は毎年300試合を超える。日本を実はサッカーだけでなくバスケ強国であるスペイン、バレー王国・ブラジルのような球技大国にすることが一生の夢で、“球技ライター”を自称している。

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