日本勢への期待はインフレ気味? これだけ厚い“卓球王国”の壁
平野、張本らへの期待は膨らむ一方だが…
ジャパンオープンは準々決勝で敗れた平野美宇。卓球人気をけん引するのは彼女たち10代の選手だ 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】
しかし、東京体育館で開かれたITTFワールドツアー「ライオン卓球ジャパンオープン荻村杯」(6月14〜18日)で大会最終日に残ったのは、男子シングルス準決勝へ進んだ水谷隼(木下グループ)だけ。平野は準々決勝で、張本は予選でともに中国勢に敗れ涙をのんだ。
女子シングルスでは、平野とともに黄金世代を担う伊藤美誠(スターツSC)も準々決勝敗退、エースの石川佳純(全農)に至っては1回戦で姿を消している。敗れた相手はいずれも18歳の王曼ユ、中国の次世代エースと期待されるホープだ。
そして大会を制したのは中国のより若い選手だった。決勝で中国ナンバー4の陳夢と対戦し、ゲームオールの末に優勝した16歳の孫穎莎だ。
第2シードの陳夢に対し、予選から勝ち上がった孫穎莎は驚くことに今大会がワールドツアー初出場。にもかかわらずダブルスでも優勝し、シニアのデビュー戦でいきなり単複制覇。準決勝を前に姿を消した日本女子は、中国のさらなる新星誕生を目の当たりにすることとなった。
中国勢の攻略に屈した平野と張本
中国選手に敗れ涙を見せる張本 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
世界ランク1位の丁寧と同2位(当時)の朱雨玲に連勝し波に乗る平野が、陳夢を破って史上最年少アジア女王に輝いた偉業は記憶に新しい。つまり中国にしてみればジャパンオープンでの再戦は国の威信を懸けたリベンジマッチ。絶対に負けられない一戦とあって、陳夢も普段では考えられない大きな声を出し、平野の得意技である超高速の両ハンドドライブと相手を翻弄する多彩なロングサーブを封じてきた。
そんな陳夢の容赦ない攻撃に勝機を見いせなかった平野は、「勝つ場所が以前よりどんどん少なくなっている。相手が自分のプレーをさせないようにしてきた時に、そこで崩れてしまった」と力なく話したが、陳夢の戦術は先頃の世界選手権デュッセルドルフ大会(5月29日〜6月5日)で、やはりアジア選手権の雪辱に燃えていた丁寧の戦術とほぼ同じだった。
また、男子シングルス3回戦で敗れた張本にしても、相手選手の梁靖崑(中国)にやはり得意技のバックハンドと鋭い横回転をかけるチキータレシーブなどを攻略され、1ゲームしか奪えなかった。
世界ランクだけ見れば39位の張本と同41位の梁靖崑は互角に見えるだろう。しかし、選手層の厚い中国ではワールドツアーをはじめとする国際大会への出場機会が限られるため世界ランクを上げることが難しく、実力は梁靖崑が張本を上回る。梁靖崑との初対戦を終えた張本も、「中国のトップ選手と変わらなかった」と話しており、相手の弱点を徹底的に攻めてくる中国人選手の高い技術と戦術の巧みさを痛感する。