ジダンの下でさらなる伝説を作ったレアル 偶然ではない史上初のCL連覇

かつての理想に近づいたレアル・マドリー

ジダンは選手たちのエゴをうまくコントロールしながら、メディアともうまく付き合う柔軟性を持っている 【写真:ロイター/アフロ】

 現在のレアル・マドリーは2000年にフロレンティーノ・ペレスが会長に就任した際に話していた「ガラクティコス」(銀河系集団)や「ジダネスとパボネス」(スペイン語でジダンたちとパボンたちの意。攻撃にジダンのようなスター選手を配置し、守備にはフランシスコ・パボンのようなカンテラ出身の選手を配置してチームを作るという強化方針)といった理想に近づいている。

 リオネル・メッシ擁するバルセロナを抑え、ヨーロッパにおけるレアル・マドリーの支配力は絶対的なものとなりつつある。ジダンが手にしたレベルの成功は、近年ではビセンテ・デルボスケ、カルロ・アンチェロッティの指揮下でしか実現し得なかったものだ。

 3人はいずれも謙虚な人柄を特徴とし、選手たちのエゴをうまくコントロールしながら、メディアともうまく付き合うことができる柔軟性を持ち合わせている。不必要に激しい身振りを交え、選手達を怒鳴りつけるようなこともしない。ただ、視聴者にとって不可欠なエンターテインメントを提供しているだけだ。

 偶然が重なっただけでは、4年間で3度のCL制覇を成し遂げることなど不可能だ。もちろん、サンティアゴ・ベルナベウでのバイエルン・ミュンヘン戦しかり、決勝まで自動的に勝ち上がれたと言っていいほど、対戦相手に恵まれた昨季の組み合わせの妙など、レアル・マドリーに有利に働いた誤審や幸運もあった。だが、それだけでこのコンペティションを勝ち続けることはできない。

良いプレーを実践しながら、結果を出し続ける

再びヨーロッパ王者となったレアル・マドリーは、訪れるべくして訪れた甘い時を堪能している 【写真:ロイター/アフロ】

 ロス・ブランコスはようやく、個々が自身の役割を理解したチームらしいチームになってきた。必要とされた際には必ずや期待に応えるケイラー・ナバス。力強さの象徴であるセルヒオ・ラモス。攻守にコンプリートなダニエル・カルバハルとマルセロ。中盤の底に構えるカゼミーロと彼に守備の負担を軽減されたトニ・クロース。2人とともに攻守に躍動するルカ・モドリッチ。さらに前線のトリデンテ(ベンゼマ、ベイル、C・ロナウドの3トップ)については、あらためて言及する必要はないだろう。

 レアル・マドリーは12度目のCL制覇を実現するとともに、12月にUAEで行われるクラブワールドカップ、そしてマンチェスター・ユナイテッドとのUEFAスーパーカップへの出場権を手に入れた。ユナイテッドを率いるのは多数の主力選手と対立し、クラブをスキャンダルの渦中に追い込んだジョゼ・モウリーニョだ。

 さらにリーガ・エスパニョーラ王者のレアル・マドリーは、国王杯の王者であるバルセロナとのスーペルコパ・デ・エスパーニャの2試合も戦わなければならない。挑戦は続くが、今のレアル・マドリーのように勝つことに慣れたチームは、プレッシャーを感じることなく、自然とフットボールを生み出せるものだ。

 ベンチから怒鳴られることなく、ピッチ外の問題に悩まされることもなく、良いプレーを実践しながら結果を出し続ける――。再びヨーロッパ王者となったレアル・マドリーは、訪れるべくして訪れた甘い時を堪能している。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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