転機となったMLBでの経験 吉井コーチの指導スタイル(1)
マウンドで大谷(右端)と話す吉井コーチ(左から2人目) 【写真は共同】
近鉄、ヤクルトで活躍
「実を言うと自分は現役時代から、コーチと解説者だけはやりたくないと思っていたんです。具体的に何かというのは思い出せないんですけど、まず(コーチと解説者は)結果でものを言うでしょ。あとは(自分の)経験とで……。それが選手のためになっていなくて、プレーの邪魔になっている感じが当時はしていて、『しょうもない仕事やな』と思いながら現役をやっていたんです。
なので自分がコーチになった時は、現役引退後に野球に携わる仕事が他になかったので(笑)、とりあえずやってみようという感じで引き受けました。その時に『どうしよう?』と考えた訳なんです。自分が現役の時にコーチにしてもらって良かったことは何かと考えたら何も思い浮かばなくて、邪魔になることばかりやなと……。そこでまずは『(選手を)見ておこう』と決めました。そこからですかね、(現在のスタイルになった)取っ掛かりは。こちらから口を出すのではなくて、選手から何か言ってくるまでは見ていようと思いました」
新天地メッツへ移籍
「(コーチになってから)後で気づいたことなんですが、アメリカでプレーしていた時の日記を読み返す機会があって、(メジャー1年目に)ボブ・アポダカ投手コーチがスプリングトレーニング中の2回目の投球の後だったと思いますが、寄ってきて『お前のピッチングのことはお前が一番良く知っているんだから、オレにいろいろ教えてくれ。それでやっていこう』と言われたんです。そんなことをコーチから言われたことがなくて、その日の日記に書いてあったんです。自分がコーチになった時のために、これはきちんと心のノートに書いておこうって……。日記を読み返して、改めてそういうスタイルでいった方がいいなと確認できました。たぶんアメリカの経験がなかったら思いつかなかったかもしれません」