ルーキー源田が好調・西武の潤滑油 “最高と最悪”を広く考え2番に定着

中島大輔

引っ張り型への回帰で能力発揮

5月14日のオリックス戦では3安打2打点の活躍。勝ち試合のヒーローになった 【写真は共同】

 また、西武の首脳陣が源田の良さを引き出した部分も大きい。ドラフト3位で入団した際、源田の評価は“守りの人”だった。ショートとしてアマチュアきっての守備力を誇るものの、打力は決して高くないというのが多くの声で、トヨタ自動車では9番を打っていた。

 それが現在では打率3割4厘(リーグ11位)をマーク。社会人野球で主軸ではなかった選手がなぜ、レベルの高いプロで結果を残せているのか。“変身”の理由について、源田自身が説明する。

「もともと引っ張り(中心の打者)だったんです。それが社会人のときには『全部向こう(逆方向)に打て』と。それで引っ張ろうと思っても、引っ張れなくなりました。(プロに入って首脳陣から)キャンプで『もう1回強く振れ』と言われて、引っ張れるようになりました」

 指導者の眼力とビジョン次第で、選手が能力をどこまで発揮できるかが大きく変わってくるのだ。

 プロ入り後、源田は強くコンタクトすることを心がけながら出塁し、50メートル5秒8の俊足を生かしている。13盗塁、5本の三塁打は、いずれもリーグトップだ。

 韋駄天(いだてん)が2番に入ることで、その効能としてクリーンアップとの好循環が生まれている。嶋コーチが説明する。

「源田には足があるので、その足で配球させることも可能です。“足があるよ”とピッチャーがちょっとでも警戒してくれれば、クリーンアップが球を絞りやすいときもあるんですよ」

 相手バッテリーが源田の足に注意すれば、ストレート系の球種が多くなる。そうやって想定できるだけで、打者はヒットにする確率を高めることができる。

塁上でもさまざまな状況を想定

 一方、「塁に出たら、走ろうと思っています」という源田にとって、中軸の前で塁に出るのは利点がある。

「クリーンアップは長打もあるので、(走って)アウトになったらやばいなとかも思います。でも、クリーンアップなので(相手の配球は)変化球も多いので、それはいいことと言うか」

 そう話すと、人懐っこい笑みをこぼした。塁上でも“最高と最悪”を考え、冷静にさまざまな状況を想定できるからこそ、結果を残すことができているのだ。

「試合に出してもらっているからには、ルーキーだからというのは関係ないと思います。自分の役割を考えながら、やるべきことをしっかりやらないといけない。塁に出て足を使ったり、追い込まれて簡単に終わったりしないことが、自分の役割です」

 まだブレークする前の開幕直前、源田はそう話していた。下位打線から2番に打順が上がったいまも、自分がすべき仕事は変わらないと考えている。

 だが、チームで2番目に多く打席が回ってくる現在、その存在感と価値がグンと高まっているのはまぎれもない事実だ。

 打線、そしてチーム全体に相乗効果をもたらすことのできるルーキーは、今後も同じような働きを続けることができるか。長らくレギュラー不在だったショートの定位置を取った男は、2番打者としても大きな役割を担っている。

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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