外国人が日本の独立Lでプレーする理由 決して楽ではない給料のその先に――

阿佐智

最近増えてきた独立リーグへのオファー

日本の独立リーグからNPB・オリックスと2度契約したカラバイヨ。彼が日本の独立リーグのために来日する外国人の流れを変えたという 【写真は共同】

「もうたくさんきますね、オファーは。ここ2、3年で増えました。3月後半に代理人からのメールがどっと来るんですよ。でもその時期はこっちも編成終わって、さあ開幕って時期ですから、なかなかそれからではね」

 外国人選手の獲得について語るのは、ルートインBCリーグ・信濃グランセローズのフロントスタッフだ。

「もちろんこっちからスカウトを派遣するようなお金はないですから。そういう代理人からのオファーや、あとは監督やコーチのコネクションが獲得ルートですね」

 日本に独立リーグというプロ野球ができて10年がすでに過ぎた。その間、MLBによる選手獲得網は着実に拡大し、今シーズンはアフリカと旧ソ連圏出身のメジャーリーガーが誕生するようにまでなった。世界規模で見た場合、プロ野球選手、あるいはそれを目指す若者の総数は確実に増えている。しかし、野球の腕一本で十分な生活の糧を得ることのできるプロリーグと言えば、MLB、NPB、韓国、それにせいぜい台湾とメキシコのトップリーグであるメキシカンリーグくらいなものだ。

 その球団の総数は、ここ20年、ほとんど変わらない。そうなると、稼げるプロリーグを目指す選手を吸収するため、育成目的の「マイナーリーグ」が増えるのは必然で、それがヨーロッパでのプロ化の進展、日米での独立リーグの増加となって表れている。

日本を意識するマイナーリーガー

 3月のメジャー、それに傘下のマイナーキャンプでリリースされた選手は、4月から5月下旬までに開幕する独立リーグのキャンプに参加して、そのシーズンの居場所を探すことになる。「キャンプ」とはいうものの、実質は入団テストで、ロースターの3倍以上の人数からスタートすることも珍しくない。これらは基本、自腹での参加となる。当然、開幕時期の遅いリーグほどレベルも報酬も低く、最底辺になると、日本円にして数十万円になる「参加費」まで徴収され、2カ月ほどのシーズンに安い給料でフル出場しても帳尻が合わないリーグさえある。選手の側からすれば、なるべく早い段階で契約を結びたいと思うのは当然のことである。

 独立リーグ最強のアトランティック・リーグ(アメリカ)の開幕はメジャーとほぼ同じ4月上旬。キャンプでクビを切られたような選手は、ここでプレーするのはなかなか難しい。となれば、4月と5月の2カ月はトライアウトに走り回る羽目になるのだが、その前に、日本の独立リーグ入りを狙う選手が増えているのだ。彼らマイナーリーガーの年間カレンダーの中に、日本の独立リーグは完全に入り込んでいる。

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著者プロフィール

世界180カ国を巡ったライター。野球も世界15カ国で取材。その豊富な経験を生かして『ベースボールマガジン』、『週刊ベースボール』(以上ベースボールマガジン社)、『読む野球』(主婦の友社)などに寄稿している。

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