レアルとユーベが見せつけた2つの強み ほぼ決着がついたCL準決勝

見る者を驚嘆させたユベントスの試合運び

イグアイン(右)の2ゴールで先勝したユベントス。落ち着いた試合運びで見る者を驚嘆させた 【写真:ロイター/アフロ】

 アウェーのトリノで行われる第2戦に挑むモナコが置かれた状況も似たようなものだ。ユベントスは今季のCLでまだ2失点しか許しておらず、かれこれ10時間以上も無失点を貫いている。ユベントスの「壁」と表現するに相応しい堅守に対し、リーグアンで首位を走るモナコでも敵地で3ゴールを決められるとは思えない。

 モナコでの第1戦にて、ユベントスはその落ち着いた試合運びで見る者を驚嘆させた。キリアン・ムバッペ、ラダメル・ファルカオらスピーディーなアタッカーを擁するホームチームの攻撃を耐えしのぐのではなく、ボールを支配しながらゲームをコントロールする戦い方を選んだからだ。それは堅守速攻に徹することが多いイタリアのチームには珍しいことである。

 ユベントスの2ゴールはいずれも同じ形から生まれた。パウロ・ディバラが起点となり、ダニエウ・アウベスのパスから最後はゴンサロ・イグアインがゴールネットを揺らした。とりわけこの試合のベストプレーヤーと言われたアウベスは、衰えが指摘されていたバルセロナでのラスト数シーズンとは見違えるほど素晴らしいパフォーマンスを見せた。

 その後ユベントスは老かいな試合運びで手にしたリードを保った。機動力に優れた中盤の選手たちはほとんどパスミスを犯さず、屈強な守備陣はゴールへの扉を閉ざし続けた。そして彼らの背後には、20シーズン以上もトップレベルで戦い続けてきた39歳の大ベテラン、ジャンルイジ・ブッフォンが万が一に備えて控えていた。

あらためて示した強化方針の重要性

ムバッペ(左)らスピーディーなアタッカーを擁するモナコだが、CL準決勝では戦力の差が出てしまった 【写真:ロイター/アフロ】

 第1戦で見せつけた力の差に加え、レアル・マドリーには長年のマドリーダービーの歴史、とりわけ近年のCLでアトレティコに傷を負わせてきた心理的なアドバンテージがある。ユベントスとモナコの状況も似たようなものだ。今季のヨーロッパにおける2つのベストチームは、それぞれ全く異なるスタイルを武器に、実現し得る最高のファイナルへと近づいている。

 モナコとアトレティコは近年、巨額の投資を行い選手の補強に努めてきた。だが第1戦の結果は、ただ選手を買い集めるだけでなく、より質の高いチーム作りを目指した強化方針を持つことが重要であることをあらためて示したと言える。

 ユベントスとレアル・マドリーはいずれも先発メンバーと同じレベルの選手たちがベンチに並んでおり、誰が欠けてもチーム力が大きく落ちることがない。対照的に、モナコはそこまで豊富な戦力を擁していない。アトレティコに至っては、先述した通りSBが1人欠け、監督がFWの人選を誤っただけで、つまりはわずかなディテールによって全く異なるチームになってしまった。

 6月3日、カーディフで行われる決勝でレアル・マドリーとユベントスの戦いが見られることはほぼ確実だろう。そのことを断定できないのは、フットボールはわずかながらもサプライズの可能性を常に秘めている、素晴らしい競技であるからに他ならない。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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