マラソン「2時間切り」は実現するか トップ3選手が前人未到の領域に挑戦

永塚和志

もし2時間を切ったら……

2時間4分45秒の記録を持つレリサ・デシサ。最高に近い環境でどこまでタイムを縮められるか 【写真:ロイター/アフロ】

 3月には、同所にてハーフマラソンの距離でテストランが行われ、キプチョゲが59分17秒、タデッセが59分41秒と60分を切る記録で走った。もちろん同じマラソンでもハーフとフルは別の“生き物”であるから単純に倍にして2時間切り、とはいかない(ちなみにキメットの世界記録を出したレースにおけるハーフ地点での通過タイムは61分45秒だった)。今年2月にハーフで59分10秒の自己ベストを出したケニアのビダン・カロキ(DeNA)は英『ガーディアン』紙に「2時間切りは私にとっては難しいと思う。ハーフマラソンで1時間を切るのですらかなり苦しいことなのにその倍を走るのはさらにもっと難しいこと」と話している。

 トップランナーともなると、通常のレースでは前半よりも後半の方がタイムが上がることもある。これは前半はまだ様子見の部分があるのと、他選手との駆け引きがあるからだろう。換言すれば、彼らはレース前半では自分のペースで走っているわけではない、ということだ。しかし今回の挑戦はレースで優勝することではなく、あくまで2時間切りの達成が目標であり、そのためのペース配分をスタートからすれば良い「だけ」となる。そう考えると、実現可能のようにも思えてくる。

3月に行われたテストランの様子。ペース配分が重要なカギとなりそうだ 【(C)NIKE】

 もし2時間を切るタイムが出た場合の扱いはどうなるか。本番まで時間はないが、公認が取れる形でレースが進められるかどうかを主催者側が調整している。しかし公認を得られなくとも、フルマラソンを1時間台で走ることの衝撃は小さくないだろう。

 米ケーブル局・CNNの取材にキプチョゲは「人間は自らの想像を超えて、ありえないと思われることも成し遂げてしまうのです」と自信のほどを示している。最高のランナーが最高の環境を与えられた時、フルマラソンで2時間を切ることができるのか。世界が注視する。

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著者プロフィール

茨城県生まれ、北海道育ち。英字紙「ジャパンタイムズ」元記者で、プロ野球やバスケットボール等を担当。現在はフリーランスライターとして活動。日本シリーズやWBC、バスケットボール世界選手権、NFL・スーパーボウルなどの取材経験がある

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