MLBでプレーする二人の日系人捕手 ヒガシオカとスズキが示す勝利への献身
再建途中のチームで期待されるスズキの役割
基本に忠実なプレーで信頼を勝ち取ってきたカート・スズキ 【Getty Images】
2007年にアスレチックスでデビューを飾ったスズキは、11年目を迎えた自身のキャリアをそう振り返る。ナショナルズ、ツインズでもプレーし、現在はブレーブスの控え捕手。ツインズ時代の14年にはオールスターに選ばれたこともあるが、抜きん出たツールがある選手ではない。それでも基本に忠実なプレーと練習熱心さで、投手陣の信頼を勝ち得てきた。
33歳で迎えた今季は、ブレーブスと1年150万ドル(約1億6000万円)で契約。現在再建途中のチームがベテラン捕手に声を掛けたのは、プレーに対する真摯な姿勢、リーダーシップが評価されたからに他ならない。
「日本はスタジアムの雰囲気が本当に素晴らしかった。ファンの温かさを感じたね。カルチャーを知り、ファンに応援してもらえたのは素晴らしかった。日本には叔母さんが住んでいて、何人かの親戚とも会うことができた。さまざまな意味で貴重な経験ができたと思っている」
アスレチックス時代の08、12年に開幕戦で来日を果たした時の感想を、スズキはそう語る。カリフォルニア州で生まれ育った日系3世のスズキには、日本文化に対してヒガシオカほどの興味はない様子。それでも生粋のハードワーカーであり、研究熱心な努力家であるスズキにも、日本人のDNAが見え隠れすると述べたらこじつけに過ぎるだろうか。
「(捕手にとって)大事なのはプレーの準備を整えて毎日スタジアムに来ること。特にキャリアのこの時点では、個人成績がどうこうよりも、とにかく勝ちたい。勝てるチームの一員になり、その手助けをしたい。自分の役割についてはあまり考えず、何でもできる限りのことをするんだ」
大切なのは綿密な準備とチーム重視の意思。もともとそんな考え方を持っていたからこそ、スズキは“メジャー10年選手”になれたのだろう。
そして、そのマインドセットは、ヒガシオカのような後に続くたたき上げのキャッチャーにも引き継がれていく。日本語では“女房役”と評される捕手たちにとって、この献身的姿勢こそが成功と長続きのレシピと言えるのかもしれない。