谷繁元信氏が語る捕手の神髄 投手をリードする9のポイント

週刊ベースボールONLINE

捕手として歴代最多出場を誇る谷繁氏がその真髄を語る 【写真:BBM】

 史上最多の3021試合、そして捕手として最多の2937試合出場を誇る谷繁元信氏。扇の要として、最も経験を積んだ捕手とも言える谷繁氏に、主にリードを中心に「9」のテーマで捕手の神髄をレクチャーしてもらった。

テーマ1:若手捕手が正捕手へ上り詰めるためには?

「勝たないと評価されません」

 最低3年、ある程度の数字を残さないといけません。その数字とは打率、打点、守備率、盗塁阻止率、チーム防御率、そしてチームの勝ち星、順位。そして、今ならクライマックスシリーズを勝ち抜いて、日本シリーズで頂点に立つ。「勝たないと評価されない」とよく言われていますし、僕もプロ10年目、1998年に横浜(現横浜DeNA)で優勝して初めてファンに認められ、ベンチから信頼される捕手になれたような気がします。

 捕手だから打てなくてもいいというわけではありません。古田(敦也)さんの通算打率2割9分4厘は別格ですが、最低ラインで僕くらいは打たないと(通算打率2割4分0厘)。僕も打率最下位というシーズンもありましたが、だったらどうチームに貢献するかを考えました。勝敗の行方を決める場面で打点を挙げることに心血を注ぎましたよ。

 また、僕が中日監督のときに捕手に言っていたのは「セ・リーグの打者のスイングをすべて覚えろ」ということ。この辺の、このボールはこうやって振ってくる、と。スイングが頭に入っていると攻めやすくなりますから。

 あと、捕手に必要な主な能力である「キャッチング」「スローイング」「リード」、そのすべてが重要ですけど、やはりまずサインを出して、捕って、投げるわけですから重要度は「リード」「キャッチング」「スローイング」の順番になるでしょうか。

 リードの前に試合に出続けるための体の強さも必要です。僕は96年に初めて正捕手として出続けたとき、シーズンが終わって、いままでにない疲労感を抱いた。そこで一からトレーニングをやり直したのが非常にプラスになりましたね。

テーマ2:指導者からの教えで印象深かったものは?

横浜時代、コーチ、監督として大矢明彦氏(左)から多くの指導を受けた 【写真:BBM】

「一歩引いて、冷静に物事を考える」

 横浜時代、バッテリーコーチ(93〜95年)、監督(96〜97年)として指導を受けた大矢明彦さんからの言葉ですね。常に言われたのは「捕手は我慢しないといけない」ということ。試合では絶対に思いどおりにならない。でも、そこで一歩引いて、冷静に物事を考える。我慢して、次の策を練らないといけません。

 抑えたら投手の手柄、打たれたら捕手の責任。そこも我慢。ある程度、地位が確立されたら「投手が悪い」となりますが、それで済ませていたら進歩がない。「違うボールを選択していたら、どうなっただろう」と進歩するためには常に反省することも重要。最後の最後まで勉強でした。

テーマ3:投手から信頼されるためには?

「“見る”じゃなく“観察する”」

 投手に信頼されないと試合に出ることはできません。もちろんキャンプからブルペンでボールを受け、投手の特徴を知ることは大前提。さらに、準備をしっかりすること。投手の長所、短所、性格、いま取り組んでいること、すべてを把握する必要があります。例えば「いまどのような状態に見えますか?」と聞かれたら、「いいときはこうだったけど、いまはこうなっている。だから、こういうボールになっているのでは」と的確なアドバイスができるようにならないといけませんから。

 会社でも上司が些細なことに気が付いてくれて、アドバイスをしてくれたらうれしいでしょう。それと一緒ですよ。そのためには準備をしないといけないし、日々を漠然と過ごしていたら的確なアドバイスはできない。“見る”じゃなく、“観察する”ことも重要です。

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