レアルとバルサが演じる喜劇と悲劇 CL4強は特徴の異なるチームの激突に

判定にも助けられ、史上初の連覇へ望みをつなぐ

バイエルンとのCL準々決勝を制したレアル・マドリーが史上初の連覇に望みをつないだ 【写真:ロイター/アフロ】

 演劇を代表する2つのジャンルである喜劇と悲劇は、対立した感情を表すものである。喜びと悲しみに満ちた人生そのものの縮図に他ならないと、常々言われてきた。4月23日(現地時間)にリーガ・エスパニョーラのタイトル争いを左右する重要な直接対決を迎えたレアル・マドリーとバルセロナも、今まさしくそのワンシーンを過ごしている。

 サンティアゴ・ベルナベウに強敵バイエルン・ミュンヘンを迎えたチャンピオンズリーグ(CL)の準々決勝で、レアル・マドリーはハンガリー人レフェリーのビクトル・カッサイ主審が下した疑惑の判定にも助けられ、延長戦まで苦しみ抜いた末に史上初の連覇へ望みをつないだ。

ビダルの退場により不利な状況となったバイエルン。レフェリーの判定には疑問符がついた 【写真:ロイター/アフロ】

 18日に行われたCL準々決勝第2戦、1−2のまま90分を終えたレアル・マドリーが延長戦で3ゴールを決めることができたのは、後半39分にアルトゥーロ・ビダルの退場によりバイエルンが1人少なくなったことが最大の要因だった(90分を終了して2戦合計3−3のため延長戦へ。最終スコアは6−3でレアル・マドリーが勝利した)。実際はレアル・マドリーのカゼミーロも90分を終える前に退場して然るべきだったのだが、幸運にも彼は最後までピッチに立ち続けることができた。

 この試合でクリスティアーノ・ロナウドが決めた3ゴールのうち2ゴールにも疑問符がついた。1つは明らかなオフサイドが見逃されており、さらにもう1つもオフサイドが取られてもおかしくない、際どいポジションから決めたものだったからだ。そのためバイエルン側はレフェリーに“試合を盗まれた”と感じていたようだが、優勝候補の筆頭に挙げられていたバイエルンを相手に、2試合で計5ゴールを決めたC・ロナウドのポテンシャルとフィニッシャーとしての能力は疑いようがないものだ。

 判定による恩恵は別として、現在のレアル・マドリーは強靭(じん)で得点力が高く、豊富な駒をそろえており、ディフェンスラインには偉大なるセルヒオ・ラモスと世界最高レベルの両サイドバック(SB、ダニエル・カルバハルとマルセロ)を擁している。マルセロがバロンドール候補に挙がらない理由があるとすれば、それはピッチ上のプレーポジションくらいしかない。

ユベントスが2試合を通して堅牢ぶりを証明

ユベントスは今季のCLでいまだ2失点。準々決勝でもその堅牢ぶりを証明した 【写真:Maurizio Borsari/アフロ】

 ユベントスやバイエルンと同様に、今季のレアル・マドリーは控えメンバーの誰が入ってもチームの機能性やパフォーマンスに影響が出ないほど、充実した戦力をそろえている。それはバルセロナにはない強みである。

 ルイス・エンリケ率いるバルセロナは、19日の第2戦で逆転の機会を全く見いだせぬままユベントスの堅守に屈した(0−0、2戦合計0−3で敗退)。パリ・サンジェルマンとの決勝トーナメント1回戦では奇跡の逆転劇を実現したが、今回は2試合を通してMSN(リオネル・メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールの3トップ)が1ゴールも挙げることができなかった。今季のCLではまだ2失点しか許していないユベントスは、この2試合でその堅牢ぶりをあらためて証明した。

 2014−15シーズンにCLを制して以降、バルセロナは2季連続で準々決勝で姿を消すことになった。その事実は現在のチームが過渡期を迎えたことを示している。とはいえ、CL敗退の直後から、警笛を鳴らすようにサイクルの終焉(えん)を主張しはじめた一部のメディアとは違い、私はそこまで大きな変化を必要としているとは考えていない。

1/2ページ

著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント