チャンスは作るも、点が取れない広島 悪くはないチームに足りない「余裕」

中野和也

過去に降格した時との違い

GK林の言葉によると、まだチームがバラバラになったわけではない 【(C)J.LEAGUE PHOTOS】

 7試合で勝ち点4。優勝どころか、J1残留を視野に戦わないといけないレベルのスタートであり、過去に2度の降格を経験している広島にとって不安がぬぐい去れない状況である。だが、クラブの指揮官に対する信頼は揺らぐことなく、選手たちもまとまっている。GK林卓人の言葉を紹介しよう。

「もし、チームがバラバラになっていたら、横浜FM戦で19本のシュートを打ってチャンスを量産することも、失点を1点に抑えることもできない」

 その言葉には、説得力があった。過去、2度の降格の時はいずれも、結果が出ないことにまず選手たちが疑心暗鬼になり、攻守においてつながっていた線がブツブツと切れてしまう。そういう現象が起きていないとすれば、まだ浮上の希望が、快進撃の望みはある。

出場機会に飢えた若者か、主力の意地か

ルヴァンカップ新潟戦でゴールを決めるなど、茶島(右)が好調を維持している 【(C)J.LEAGUE PHOTOS】

 横浜FM戦の試合翌日に行われたトレーニングマッチで、ユースを含む若手中心の広島はカマタマーレ讃岐を終始圧倒し、稲垣祥のPKと茶島雄介の強烈なドリブルシュートで2点を重ね、快勝した(2−0)。特に茶島は12日のルヴァンカップ新潟戦でもゴールを決め、好調を維持。特に強烈な突破とプレースキックの正確性は、今のトップチームに必要だと感じた。

「茶島の成長は実感している。彼は先発から外されても、どういう苦境にあっても腐ることなく、自分の課題を見据えて気持ちを整理し、一歩一歩伸びてきた。クオリティーは上がっているし、自信も持っている。雰囲気も一回り大きくなってきた」

 森保監督も愛弟子の成長に目を細めている。G大阪戦に勝利し、横浜FMに敗れはしたが、内容は向上しているわけで、大きく何かを変える必要は少ない。ただ、形は変えなくても選手の入れ替えはおおいにあり得る。出場機会に飢えた若者たちが、チームを救えるか。責任感という鎧を着ながらもなお、爆発的なパワーを発揮して自分の未来を切り拓く若者が、出てくるのか。それとも、試合に出ている主力たちが意地を発揮してくれるのか。結局は、そこに尽きる。

「俺たちも頑張るから!」

 試合後、あいさつに来た選手たちに、サポーターはそんな言葉で「一緒に戦おう」とメッセージをくれた。今度はチームが応える番だ。

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著者プロフィール

1962年生まれ。長崎県出身。広島大学経済学部卒業後、株式会社リクルートで各種情報誌の制作・編集に関わる。1994年よりフリー、1995年よりサンフレッチェ広島の取材を開始。以降、各種媒体でサンフレッチェ広島に関するリポート・コラムなどを執筆。2000年、サンフレッチェ広島オフィシャルマガジン『紫熊倶楽部』を創刊。近著に『戦う、勝つ、生きる 4年で3度のJ制覇。サンフレッチェ広島、奇跡の真相』(ソル・メディア)

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