「限界作らず練習した」羽生が逆転V 宇野も2位、強さを示した日本男子

宇野「自分は自分と考えていた」

「今できる自分の100パーセントを出せた」と、宇野は会心の演技で自己ベストを大きく更新した 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 一方、2回目の世界選手権出場になる宇野は、まずショートで2位につけてその存在感を再び世界にアピールした。羽生の直後となった滑走でも、代名詞である4回転フリップ、4回転トウループ+3回転トウループのコンビネーション、トリプルアクセルと質の高いジャンプをそろえ、スピンやステップもレベル4を記録。自己ベストを更新する104.86点と文句なしの結果に「すごく気持ちよく滑ることができて、1年やってきたことをここで出せたのはうれしかった」と笑顔を見せた。

 フリーでもループ、フリップなど4つの4回転をしっかりと着氷。3回転ルッツで着氷が乱れたほかは、ほぼミスのない演技で、パフォーマンスとしても観客に訴えかけるエネルギッシュな表現で魅了した。120.03点と高い技術点、9点台を連ねた演技構成点の両輪がそろい、フリーで214.45点、合計319.31点と自己ベストを更新する高得点を獲得。見事に銀メダルを手にした。

「みんなノーミスで、プレッシャーになったかもしれないですけど、やっぱり自分は自分と考えていたので、去年の失敗をしないよう楽しく滑れたらいいなという思いでした。むしろユヅくん(羽生)のあれだけの点数、演技を見て、『どんなことをしても勝てないな』という確信が生まれたので、開き直って自分のことをやろうと思いました。今できる自分の100パーセントを出せました」

 日本勢は上位2人の合計順位が「3」となり、平昌五輪の出場枠を最大の3枠とした。

フェルナンデスは3連覇ならず

 各国の強豪スケーターたちも熱い戦いを見せた。3位に入ったのは、昨年に引き続き金博洋(中国)。自身が世界で初めて成功させた「4回転ルッツ+3回転トウループ」を今回もショートで決め、フリーでも4本の4回転に加えて2本のトリプルアクセルなど得点を積み重ねた。落ち着いた演技で合計303.58点と、自身初となる300点の大台に乗せ「今回のフリーは僕のこれまでで最高の演技です」と話した。

3連覇を狙ったフェルナンデスは、フリーで転倒もあり、4位に終わった 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 大会3連覇を目指したフェルナンデスは、ショートで109.05点の高得点を出し、絶好のスタートを切った。しかし、フリーでは4回転サルコウで転倒。他のジャンプにもミスが出て、フリーに限っては192.14点と6位に後退。合計301.19点と300点超えを果たしながら、4位に転落した。

「フィギュアスケートは大変なスポーツ。(今回の敗北について)五輪に向けて、ポジティブな面を見ていきたい。きっとプレッシャーが少し減ると思うよ」

17歳チェンは6位も「楽しかった」

 パトリック・チャン(カナダ)は、豊富な経験を生かした試合運びで見る者を感嘆させた。ショートでは今や彼のトレードマークとなったダイナミックな「4回転トウループ+3回転トウループ」をはじめ、3つのジャンプ要素をこれ以上ないような精度で成功させて、3位で終える。だが、フリーではトリプルアクセルや2本目の4回転トウループにミスが出てしまうなど、最終的には5位となった。常々「いつも表彰台に乗る必要はない。そのすぐ近くまで迫っていればいい」と話している通り、五輪の大舞台を虎視眈々(たんたん)と狙う姿勢をあらためて鮮明にしつつ、上位選手の活躍をたたえるベテランらしい余裕も見せていた。

17歳のチェンはフリーで4回転6本を入れる驚異的な構成で臨んだが、ミスもあり6位で大会を終えた 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 今回、台風の目として注目を集めていた17歳のネイサン・チェン(米国)は、フリーで4回転ジャンプを6本入れる驚異的な構成で臨んだ。ショートで苦手としているトリプルアクセルが決まらず6位スタート。フリーでは4回転ルッツ、4回転サルコウで2度も転倒するなど、彼のポテンシャルからは程遠い演技内容となってしまった。6位に終わり悔しさをにじませたが、「世界選手権は僕にとって新しい経験で、最高だったし楽しかった」と大物ぶりも感じさせた。

 男子の五輪出場枠で3枠を獲得したのは、日本と米国のみ。2枠はカナダ、ロシア、スペイン、中国、イスラエルとなった。1枠はウズベキスタン、ジョージア、カザフスタン、ラトビア、オーストラリア、フランス、チェコ、ドイツに決定している。

 史上まれに見るハイレベルな戦いは、平昌五輪の舞台で再現されることだろう。選手たちがケガに悩まされることなく、アスリートの限界に挑む姿を見せてくれることを祈りたい。

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