NCAAの夢舞台に足跡を刻んだ八村塁 3ポイントで初得点、ゴンザガ大は4強へ
八村の武器と課題
NCAAトーナメントでも持ち味のフィジカルの強さを発揮している八村(右) 【Getty Images】
八村をはじめとする外国人選手のリクルートを担当するアシスタントコーチのトミー・ロイドは、バスケットボールのレベルから言葉、文化などすべてが異なる米国でのキャリアを始めたばかりのこの19歳の1年目選手は「まだ準備ができていない」と話す。
そんなロイドコーチだが、「ここ2カ月ほどで塁はかなり成長した」と言う。これを八村本人に伝えると「2カ月前にコーチから『ジャンプシュートをやめて3ポイントかドライブだけにしろ』と言われた」ことが、成長につながったと話す。
「ジャンプシュートはいつでも伸ばせるから、ドライブと3ポイントに集中しろ」と指示されたという八村。大きな相手にドライブで立ち向かっていくことで「気持ちのところでも成長できた」と前向きに捉える。シーズン途中でのそういったプレースタイルの軌道修正については「僕がずっと出ているわけではないですし、コーチからは『来年へ向けてのこと』と言われた」ということで戸惑いはない。
日本時代は圧倒的な身体能力で高校バスケ界を席巻した八村だが、そこはタレントが豊富にいる米国でも変わらないし、コーチ陣もそこを八村の良さだと認識している。
例えばベスト16の試合では、先に述べたように味方にファウルトラブルがあったこともあるが、相手が多用してきたオールコートのディフェンスの打開のために身長203センチ、体重102キロの体躯(たいく)ながらスピードがありドリブルのできる彼が起用されたところもあったようだ。
「いつかチームは八村を必要とする」
「いつかチームは八村を必要とする」と言われるほど、八村(21番)は将来を期待される存在だ 【Getty Images】
ロイドコーチも、八村がゴンザガ大でのバスケットボールに順応すれば「われわれのセンターピース(中心選手)になる」と強調する。
幸いにも、まだ英語を十全に話せるわけではなく学校での授業などでもおそらく苦戦しているだろう八村が、少なくとも明るく振舞いチームにもよく溶け込んでいるところは好材料だ。八村の英語に関して、ウィリアムズ=ゴスによれば「最初は苦戦していたのに今ではだいぶうまくなって逆にしゃべりすぎだから『黙れよ』と冗談で言うくらい」だということで、頼もしさも感じる。
ファイナル4は準決勝が4月1日に、それを勝ち抜いた2チームが同3日の優勝決定戦に臨む。無論、重要な試合であるから八村の出番もあるいは皆無であるかもしれない。それでも、普段はアメリカンフットボールの試合で使われる約7万人規模の会場(=ユニバーシティ・オブ・フェニックス・スタジアム)における大舞台を経験することは大きい。
「試合に出られるかどうかは別にして、それを経験できるのは米国人でも少ないですし、それを日本人としてできるのを誇りに思って試合に臨みたいです」(八村)
八村へは東京五輪などこの先、日本代表チームを牽引する役割も求められてくる。また世界最高峰のNBA入りも狙う。その意味でも今回のファイナル4出場決定は、非常に大きなことである。