米国初優勝でWBCは新たなページへ ようやく本気を出した野球王国
連帯感こそ過去との最大の違い
「(所属チームでは)みんなが3番打者だけど、ここでは誰かが7番、8番を打たなければいけない。僕たちの中にエゴはなく、それに関しては投手陣も同じだ。そのおかげでこのチームはここまでたどり着けたんだ」
準決勝後にアンドリュー・マカチャンはそう語っていたが、実際に今回のアメリカにはこれまでにないまとまりが見て取れた。何より、この部分こそが過去のチームとの最大の違いだったのだろう。
3月6日にフロリダ州に集まり、以降、マイアミ、サンディエゴ、ロサンゼルスと続く旅を続けてきた。その過程で、全員ではないにせよ、比較的若いメンバーを中心とした連帯感が生まれたのは想像に難くない。
一丸になったから勝てたのか、あるいは勝ち始めたからまとまったのか。その答えがどうであれ、今大会のアメリカに関しては、“ドリームチーム”ではなかったことが大きなマイナスになったとは思わない。逆に全米的なビッグネームが少なかったからこそ、エゴのないプレーが可能になった部分もあったはずだ。
改善すべき問題はあれど大会は成功
「選手の名前を挙げることはできないが、大会が始まるや否や、1次ラウンドの途中から私の電話は鳴り始めた。(多くのスーパースターが)参加すべきだったんじゃないかと考え始めたのだろう。驚きではなかったよ。胸に母国の名を刻んでのプレーは特別なんだ」
決勝戦の前に行われた会見で、メジャー選手会専務理事のトニー・クラーク氏はそう述べていた。今大会の活躍を見て、ビジネスライクになりがちなアメリカの他のスーパースターたちが本当に愛国心に目覚めるのかどうかはわからない。ただ、いずれにしても、第4回大会に参加したアメリカ選手たちの真摯な姿勢がイベント全体を盛り上げたことの価値は変わらない。
王国がようやく気持ちを入れてプレーしたことで、発展途上のWBCはまた一歩前に進んだ。そう感じられたことが、今大会の最大の収穫だった。だからこそ、決勝戦が少々残念なワンサイドゲームになった後でも、全イベント終了後の後味は決して悪いものにはならなかったのである。