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抜群のチーム力でVリーグを制したNEC
苦しい状況を救ったリザーブの選手たち

近江「途中から出てきた選手に何度も救われた」

苦しい状況を立て直す原動力となったリザーブの選手たち。近江は「途中から出てきた選手に何度も救われた」と言う
苦しい状況を立て直す原動力となったリザーブの選手たち。近江は「途中から出てきた選手に何度も救われた」と言う【坂本清】

 このままリーグ戦も勢いに乗り、突っ走るのではないか――。


 何より選手たちの中にも「このスタイルで戦うことができれば勝てるのではないか」と、少なからず自信もあった。


 だが、思惑とは裏腹にリーグ戦ではなかなか勝つことができない。開幕戦では岡山シーガルズに敗れ、スタートダッシュを狙ったファーストレグは4勝3敗。ふわりとしたパスからの攻撃展開が単調になれば、相手ブロックに捕まり、打つコースが封じられることで、セッターもアタッカーも決め急いでしまう。本来は武器であるはずのミドルブロッカーの攻撃を生かせないことも多々あった。


 そんな苦しい状況のなか、チームを立て直す原動力になったのはリザーブの選手たちだった。


 昨年まではチームの得点源とも言うべき活躍を見せたミドルブロッカーの島村春世だが、今季は相手のマークも例年以上に厳しくなった。島村が決められなければ、山口にも焦りが生まれる。山口のトスが低くなったり、短くなったりと島村は万全の体勢でスパイクを打ち切れず、悪循環を招くことになった。


 そこで投入されたのが、リザーブの上野香織や、家高七央子だ。AクイックやBクイックなどセッターの前から打つ攻撃を得意とする上野と、ライトへ回り込むブロード攻撃を得意とする家高。タイプの異なる選手が投入されることで、相手のディフェンスにも乱れが生じ、劣勢からはね返すことも1度や2度ではなかった。


 ミドルに限らずセッター対角のオポジットも同様だった。決勝の2試合では高いアタック決定率、決定本数を残したニコロバだが、最初からチームの得点源だったわけではない。むしろレギュラーラウンドにおいては、序盤から中盤にかけて、柳田光綺が機動力を生かした攻撃を見せ、相手にスピードを強く印象付けた。終盤に調子を上げたニコロバの対応力もさすがだが、それは1人の力ではない。柳田や山口が長いシーズンの中で打ってきた布石が、ニコロバの決定力を上げた一因でもあるだろう。


 ワンポイントで投入されるサーバーやブロッカーも含め、それぞれが役割を果たすべき場面で、持ち味を発揮する。そんな選手たちの活躍が、結果的にチームの起爆剤となり、シーズン中盤からの上昇につながったと近江は言う。


「自分に与えられた仕事をみんなが理解していました。スタートの7人だけだったら絶対に勝てない。途中から出てきた選手の力に、何度も救われました」

大野や古賀が飛躍的な成長を見せる

レギュラーは確約されない。そんな危機感のもと、古賀(写真)や大野が飛躍的な成長を遂げた
レギュラーは確約されない。そんな危機感のもと、古賀(写真)や大野が飛躍的な成長を遂げた【坂本清】

 山田監督が「このチームにはレギュラー、リザーブという発想自体がない」と言うように、誰もが戦力であり、すべての選手にチャンスが与えられる。つまり、結果が出なければコートに立ち続けられるわけではないということでもある。


 そんな危機感のもと、ミドルブロッカーの大野果奈やウィングスパイカーの古賀といった若手、中堅選手が飛躍的な成長を遂げた。


 自身の得点力を高めるために「夏場の鍛錬期はスパイクの通過点を落とさないように取り組んできた」という古賀は、山口に少し高めのトスを求め、体を大きく使いながら、最高打点で打つことを心掛けていた。結果として、コース幅も広がり、ストレート、クロス、インナーと状況に応じて打ち分けられるようになり、チームの「エース」と呼ぶにふさわしい存在へ成長した。古賀自身も「前よりも『自分が引っ張る』という気持ちが強くなりました」と話すように、山田監督も積極的な姿勢で取り組み続けた古賀を「チームの軸になった」とたたえる。


 その古賀を生かしたのが大野だ。スピードを増したミドルからの攻撃に加え、ブロック後にはライトへ開いてコートの奥を狙ったスパイクを決めるなど、限られた攻撃パターンではなく、多彩な攻撃を展開することで大野に対する警戒が強まり、サイドが手薄になる。その結果、ラリーの中でも古賀や近江がサイドからブロック枚数が少ない、優位な状況で打つことができる機会も増えた。


 ブロックフォローや、今季から改良を加えた助走を長く取って打つサーブや、サーブ後のディグ(スパイクレシーブ)など、決して派手ではないが堅実なプレーをおろそかにせず。ポジション争いが激化するチームの中で「自分がミドルの軸になりたかった」という大野は、優勝の喜びをかみしめながら目を潤ませた。


「チーム全員が『1本目のパスを丁寧にしよう』と心掛けて、(近江)あかりさんや(リベロの鳥越)未玖が出してくれるパスのおかげで攻撃に入れました。自分が周りを生かしたいと思っていましたが、みんなのおかげで自分も生かされました」


 ファーストレグや天皇杯で勝てず、スピードを武器とする久光製薬や日立リヴァーレに敗れるたび、「自分たちもトスのスピードを速くするバレーに切り替えなければ、勝てないのではないか」と迷うこともあった。だがそんな時、山田監督は選手たちに訴えかけた。


「夏からやってきたバレーは間違っていない。絶対に結果は出るからこのまま貫こう」

迷いを消し、やるべきことを全員が果たす。地道にコツコツと積み重ねてきた成果は、決勝で見事に花開いた。


「自分たちがやってきたバレーを変えずに、信じて、ブレずに貫いてきてよかったです」。 優勝を決めるビクトリーポイントを決めた近江が、笑顔で言った。


 抜群のチーム力で成し遂げた、2シーズン振りの優勝。その強さは本物だった。

田中夕子

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など、女子アスリートの著書や、前橋育英高校野球部・荒井直樹監督の『当たり前の積み重ねが本物になる』では構成を担当

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