台湾野球が抱える数々の課題 「打高投低」で挑みWBC3連敗
敗因を指摘する台湾メディア
初戦のイスラエル戦で1回に4失点を喫した郭俊麟(右から2人目) 【写真は共同】
台湾メディアはこの戦いぶりをどう報じたのか? イスラエルに大敗した直後は、ありえないエラーが出たこともあり、厳しい論調が目立った。しかし、前回ベスト4のオランダには互角に渡り合ったことで、「誇りを取り戻した」と賞賛。さらに0−6から諦めずに同点に追いついた9日の韓国戦後は、選手たちの健闘をたたえる論調が目立った。
もっとも、次回大会は予選からの出場となったことから、郭泰源(カク・タイゲン)監督の継投のタイミングや選手起用、また2試合連続で敗戦投手となった抑えの陳鴻文(チェン・ホンウェン)らに対し、インターネット上では厳しい批判の声もあった。しかし、多くのメディアはこうした批判を、ファンの声を紹介するという形で伝えるに留まっている。
今大会の戦いぶりは、近年の台湾プロ野球の「打高投低」そのままの形であり、同時にこれが敗因でもあるという指摘がされている。予想以上の活躍をみせた投手もいたが、全体的に見れば、2015年11月の「世界野球WBSCプレミア12」と同様、投手力の層の薄さが浮き彫りとなった。メディアの論調では、「投手陣の底上げができなければ、トップレベルの選手が参加する国際大会では、より厳しい戦いになる」と憂慮している。
CPBLとCTBAの“内紛”
一方、アマチュアを管轄する中華民国野球協会(CTBA)は、国際大会へプロ選手が参加するようになって以降も、一貫して窓口を務めてきたとして譲らなかった。昨年9月、スポーツ行政を管轄する教育部体育署によりCTBA主導が決定すると、CPBLは支援拒否を表明、大会参加については各球団の自主判断とした。その結果、かねてよりCTBAに不満を持っていたCPBLのラミゴは選手派遣を見送った。メディアはこうした“内紛”問題について、今後3年、アジア大会、東京五輪予選、プレミア12など重要な国際大会が控えており、早急に解決すべきだと指摘している。
ファンの間からはCTBAに対する批判が高まっている。一部ファンは、今大会の成績不振の原因はCTBAにあると主張、選手らへのサポート不備、不透明な財政などについての不満から、解散、組織再編を求める活動を発起、25日にも政府、教育部体育署、CTBAへ怒りの声を直接伝えるためのデモ活動を行うという。
台湾では昨年、CPBLが、日本の「侍ジャパン」を参考にした会社組織を設立する構想を明らかにしたが、CTBAからも同様の構想が出ており、現時点では双方に歩み寄りはみられない。ラミゴのGMも11日、今後もCPBLが主導する大会のみに参加する方針を示した。
こうした中、空席となっていた体育署の新署長に、林徳福氏が就任することになった。林氏はかつて、2リーグに分裂していたプロ野球の合併に尽力した人物として知られる。台湾版「侍ジャパン」の設立も含めた、“内紛”問題の解決に向け、その手腕が注目される。