台湾野球が抱える数々の課題 「打高投低」で挑みWBC3連敗

駒田英

最優先は投手力の向上

台湾を率いた郭泰源監督。今回のチームについて「前回大会以上にまとまりがあった」と振り返った 【写真は共同】

 今大会をもって、林智勝(リン・ジシェン)、陳ヨン基(チェン・ヨンジー)、胡金龍(フー・ジンロォン)、潘威倫(パン・ウェイルン)ら代表チームを10年以上支えてきた選手が代表から引退し、世代交代を迎えることになる。

 台湾プロ野球の選手会会長も務める胡金龍は、初戦で対戦したイスラエルについて、「彼らの大部分はマイナーリーグから選出された。彼らのパフォーマンス、実力を見れば、台湾との違いがどこにあるかわかる」と指摘。「アメリカ、日本、韓国のファームのシステムは整っており、選手数も多い。台湾は選手育成システムを強化する必要がある」と述べた。

 WBCを辞退したラミゴの選手を主体にしたCPBL選抜が、侍ジャパンとの壮行試合初戦で打ち勝ったことからもわかるように、台湾の打者は既に一定のレベルにある。台湾メディアが指摘しているように、台湾にとって最優先課題なのは3試合で32失点と打ち込まれた投手陣の底上げだ。

 今大会の“投壊”は、主力になると見られていたメジャーリーガーや、マイナーリーグ所属のプロスペクト級の投手が次々に辞退、招集できなかったことも大きな原因だ。台湾プロ野球の環境が以前に比べ改善したことで状況は変わりつつあるが、トップクラスの高校生が卒業後にメジャー球団と契約することが多い台湾では、こうした事態は今後も十分起こり得る。

先発型投手の育成が急務

 今大会で先発を務めたのは第1戦が郭俊麟(カク・シュンリン)、第2戦が宋家豪(ソン・チャーホウ)、第3戦が陳冠宇(チェン・グァンユウ)で、いずれもNPB所属選手。各試合の2番手で登板したのも陳冠宇、江少慶(ジャン・シャオチン)、郭俊麟と、いずれも「海外組」だった。

 中継ぎ陣も30代のベテラン投手が目立った。CPBLでは、各球団ともに先発陣は外国人投手が軸となっており、昨シーズン規定投球回数に達した台湾人投手は鄭凱文(ジェン・カイウン)、王溢正(ワン・イイゼン)の2人のみ。彼らも元「海外組」であり、他の台湾人先発投手の台頭が期待される。一部球団では、2軍に外国人コーチを起用するなど、育成に力を入れ始めているが、こうした取り組みをさらに強化し、若い台湾人投手、特に先発型投手を育ててほしい。

 2軍を含めた育成制度の充実に加え、プロ・アマの連携強化、CPBL5、6球団目の設立、台湾版「侍ジャパン」設立による代表常設化、目指す野球スタイルの確立など、一つ一つの取り組みが、代表強化につながる。

 台湾では国民に最も人気がある球技で、「国球」と呼ばれる野球のために、各方面が手を取り合い、長期的な視野をもち、さまざまな改革が行われることを期待したい。

日本とは異なる台湾野球の魅力

 郭泰源監督は、今回のチームを「前回大会以上にまとまりがあった」と評した。辞退者続出の中、格上のチーム相手でも、「取られても取り返す」台湾スタイルで戦いを挑み、互角の戦いをみせた選手たち、そして彼らを支えたスタッフに拍手を送りたい。特に、今大会限りで代表を退くベテランたちにはお疲れ様と言いたい。

 侍ジャパンと対戦したCPBL選抜や、今回のWBCを通じて、台湾野球に魅力を感じた方もいると思う。そうした方は、ぜひ今シーズン、台湾野球を見に台湾を訪れてほしい。豪快な野球、熱い応援(華やかなチアガールも)、そして選手とファンの距離の近さなど、日本の野球とはまた違った魅力を感じるはずだ。

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著者プロフィール

台湾野球好きが高じて2006年に来台。語学学校でまず中国語を学び、その後、大学院で翻訳を専攻。現在、政府系国際放送局で日本語放送のパーソナリティーを務め、スポーツ番組も担当。『台湾プロ野球<CPBL>観戦ガイド 』(ストライク・ゾーン)に執筆者の一人として参加した。

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