ドミニカ共和国、WBC連覇へ死角なし 母国のために集う大物選手とその理由

丹羽政善

大リーグでも超一級並んだ野手

第3回大会で打率4割6分9厘でMVPに輝いたカノ。今大会も主力としての活躍が期待される 【写真:ロイター/アフロ】

 野手は、大リーグでも超一級の人材がズラリ。

 ベルトレの実績についてはすでに触れたが、前回大会で4割6分9厘と打ちまくり、MVPを獲得したロビンソン・カノ、3季連続で40本塁打以上を放っているネルソン・クルーズ(ともにマリナーズ)、リーグ屈指のオールラウンダーと評価されるマニー・マチャド(オリオールズ)、昨季復活し30本塁打を放ったハンリー・ラミレス(レッドソックス)、昨季初めて3割を打ち47盗塁をマーク、守備も非凡なスターリング・マルテ(パイレーツ)らが名を連ね、打線に切れ目がない。もちろんパワーも参加国では屈指で、レギュラークラスの昨季平均本塁打は30本を超える。相手投手は気が抜けないはずだ。

 ただそうした一方、短期決戦の勝敗を分けるのは投手力とされる。大リーグのプレーオフでも、そういう傾向が強い。

 だが、ドミニカ共和国の場合、その点でも穴は少ない。

 クエトが抜けたのは痛く、1次ラウンド3戦目にはブリュワーズのウィリー・ペラルタが先発予定だが、1次ラウンドの相手はカナダ、米国、コロンビア。2勝は固く、2次ラウンド進出に大きな不安はない。そうすればクエトが戻ってくるので、予定通りのローテーションで2次ラウンドには臨めるだろう。

投打ともにほぼベストな戦力

昨季51セーブのファミリア。層の厚いドミニカ共和国のブルペンを支える 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 何より層が厚いのが、ブルペン。

 3年連続でオールスターに選ばれているヤンキースのデリン・ベタンセス、先発から抑えに転向した昨季37セーブ、防御率1.91の好成績を残したアレックス・コロメ(レイズ)、過去2年で69セーブを挙げているサンティアゴ・カシーヤ(アスレチックス)、昨季51セーブでナ・リーグのセーブ王となったジェウリス・ファミリア(メッツ)らがいて、終盤までリードしていれば逃げ切れる計算が立つ。

 前回大会を振り返っても、8試合中7試合が3点差以内の勝負。それをことごくブルペンでものにし、8試合に登板して7セーブをマークしたフェルナンド・ロドニーを始め、カシーヤ、オクタビオ・ドーテル、ケルビン・ヘレラ、ペドロ・ストロップらが1点も与えず、優勝の原動力になった。今回はあのときの顔ぶれさえ上回るのだから、打線のチームとのイメージが強いものの、後半の1点勝負となれば、むしろ彼らのペースではないか。

 それにしても、投手、野手ともほぼベストに近いメンバーだ。あえて言えば、アルバート・プホルス(エンゼルス)、エドウィン・エンカナシオン、ダニー・サラザール(ともにインディアンス)、フランシスコ・リリアーノ(ブルージェイズ)らを欠く程度ではないか。

自己犠牲をいとわない母国愛の理由

メジャー通算3000安打まで残り58本と迫るベテラン・ベルトレ。キャンプ前の自主トレのケガで出場辞退も危ぶまれたが、ドミニカ共和国代表への参加を強行した 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

「いざ、WBCへ」

 彼らは、WBCと聞けば自己犠牲をいとわない。ベルトレのように故障のリスクがあっても、だ。では、なぜそこまで母国愛が強いのか。

 その理由を、カノが米メディアの取材に対してこう答えている。

「国を代表して戦える、唯一のチャンス。そして母国の野球ファンが、オレたちを一度に見られる唯一の機会でもある。ウインター・リーグでも、チームはバラバラだからね」

 ベネズエラ、プエルトリコも同様に、選手、ファンが熱い思いを持って大会に臨む。日本も各選手の意識の高さ、周囲の盛り上がりではそれ以上かもしれないが、単純に戦力を比較するとやや分が悪い。

『OddsShark.com』というオンラインベッティングサイトでは、米国に次ぐ2位と予想されているドミニカ共和国だが、過去、温度差が如実に勝敗に反映されているだけに、戦力も兼ね備えた彼らには、死角がないと言える。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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