日本ラグビー「9番」争いに挑む茂野 名前を覚えてもらえない時代からの飛躍

斉藤健仁

「フミさんから盗んで成長できるように」

日本、世界で活躍し、実力を高く評価されているSH田中 【斉藤健仁】

 ただ、SHには、昨年まで4年間、ハイランダーズで活躍したパイオニアの田中、昨秋の日本代表でも試合に出場した内田啓介、ヤマハ発動機を支える矢富勇毅、突破力と正確なキックが武器の小川高廣と個々に特徴のある5人が選出。田中は「(個人的には)負けないぞという思いはありますが、茂野や小川、内田もいいプレーをしている。世界を経験すれば日本ラグビーが伸びていく」とライバル争いを歓迎している。

 そして、「ゲームタイムを与えたかった」(フィロ・ティアティアHC)という理由で、茂野は、新加入のNZ出身のSOヘイデン・クリップス(東京ガス)とともにプレシーズンマッチに先発。持ち前の強気な姿勢、長いパスでチームの勝利に貢献したが、パスをインターセプトされてトライも献上してしまった。「試合に出場できたことは経験値が上がったし、チームとして動けたことは良かったが、個人的には納得していない。ゲームの流れも作れなかったし、もっとスペースにアタックできるところもあった」(茂野)

 また後半途中から出場した田中は、トライを挙げるなど、さすがの存在感を示した。その田中のプレーを間近で見た茂野は「(田中)フミさんは、トライを取る流れの中でボールさばきもいいし、テンポや相手との間合いを見ながらパスをしているところもあり、うまくいったからトライになった。そういったところを僕が盗んで成長できるようになりたい」と自分との違いを真摯に受け止めていた。

スーパーラグビー2年目は「しっかり結果を出したい」

「もっとスマートにならないといけない」と語る茂野 【斉藤健仁】

 現在の課題を、茂野は「自分にはまだムラがある。コンスタントにいいパフォーマンスを出したいし、ゲームを作っていく上でもっとスマートにならないといけない」と感じている。ただ、スーパーラグビー関しては2年目であり、NZでの実績もある。「昨年の経験を生かして、アグレッシブにいって、しっかり結果を出したい」

 昨年よろしく茂野は再び、サンウルブズで実力を証明し、6月(アイルランド、ルーマニアと対戦予定)に再び、桜のジャージに袖を通すことができるか。そして、ライバルの田中らと伍して戦い、「9番」として先発することが、日本代表の強化だけでなく、そして2019年ワールドカップへとつながっていく。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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