真逆の挑戦が実った金メダル スノボ家根谷、五輪目指して歩む修行の道

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靭帯損傷、スノボ不祥事……重なった試練

 その取り組みが徐々に実を結びつつあったなか、昨シーズンの最終戦であるW杯ビンテルベルク大会(ドイツ)でレース中に転倒し、左膝の前十字靭帯、半月板、軟骨を損傷する大けがを負ってしまう。膝を酷使するスノーボード選手にとって選手生命に関わるけが。年齢もすでに30歳を超えていた。

 それでも家根谷はすぐに手術し、リハビリへ励んだ。それを支えるのは、ソチ五輪を逃した際に感じたという、この思いだ。「これは『もっと修行しろよ』という意味だなとプラスに捉えてやりました。五輪に出てメダルを取りたいという気持ちがすごく強いんです」。

 半年間にわたって地道なリハビリに励み、いよいよ雪上に帰ってレース感覚を取り戻そうとした矢先の今シーズン、今度はスノーボード全強化指定選手の活動が、一部選手らによる不祥事で休止されてしまう。思うような練習も積めず、年明けから復帰したW杯では、調子は良いのに結果が付いてこない、もどかしい時期を過ごした。

 家根谷は今大会でその感覚のズレを一致させることに成功した。

「(今季)なかなかレースで思うように滑れなかったというのは、その練習不足の不安というメンタルからきていると思うんです。それが今回、レースでしっかり自分の滑りができれば結果は付いてくるというのを証明できて、吹っ切れました」

修行の先に待つのは平昌五輪

開会式のセレモニー中に行われた表彰式。家根谷の胸で、金メダルが輝いた 【写真:ロイター/アフロ】

 今大会が行われている北海道・札幌は、家根谷にとって高校、大学を過ごした「第2の故郷」(家根谷)。次に札幌へ戻ってくるのはシーズンの最後、全日本選手権だ。それまではヨーロッパを中心にW杯、世界選手権などを転戦する。

「先日平昌でプレ五輪があったんですけど、すごい雪質も良くていい斜面だったので、そこでいろいろ感触を得ることができました。自分が来シーズンここに立つために何をしなければいけないのかというのをしっかりと考えることができましたし、やることが明確になってきています」

“修行”を経て一回り大きくなった家根谷。平昌五輪出場までにはまだいくつかの試練が残されているかもしれない。その度に修行を重ね、より強くなって乗り越えていくことだろう。

(取材・文:藤田大豪/スポーツナビ)

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