アマチュアで戦う日本人選手たちの現状 瀬田元吾、ドイツサッカー解体新書(5)

瀬田元吾

フォルトゥナU−23に所属する金城ジャスティン俊樹(右) 【写真:瀬田元吾】

 日本でプロになれない選手が海外でプロを目指すなんて現実的ではない、という考えはもう昔の話である。今では、東南アジア諸国にチャンスを求める選手もいれば、米国やオーストラリアでのプレーを選択する選手もいる時代だ。

 今シーズンのドイツ・ブンデスリーガには、1部に8人、2部に5人の日本人選手が所属している。その数はヨーロッパでも群を抜いているが、実はそれより下のリーグでも、多くの日本人選手たちがプロへの階段を上がるために日々、切磋琢磨(せっさたくま)している。

 近年はJリーグを経由せず、高校や大学から海外に挑戦するケースが徐々に増えてきている。そこで今回は、なぜ多くの若い日本人選手が、ドイツのアマチュアリーグを目指して海を渡るのかに焦点を当てて、現状をリポートしてみようと思う。

外国でプレーするために不可欠なビザ

 プロであってもアマチュアであっても、日本人選手が外国でプレーするためには、ビザが必要不可欠となる。日本のパスポートはビザなしで世界150を超える国に入国できるが、長期的に海外に住む場合には、例外なくビザが必要。大きくは学生ビザと就労ビザの2つがあるが、それ以外にもワーキングホリデー(以下、ワーホリ)ビザというものが存在する。これは、日本と協定を結んだ国に一定期間滞在できるもので、ワーホリ協定国は現在ドイツを含む16カ国。なお、このビザは取得することができる年齢に制限があり、ドイツは18歳以上30歳以下(入国時の年齢)に限られている。

 ブンデスリーガ1部や2部クラブからオファーをもらうようなプロ選手は、契約するクラブと雇用契約を結ぶことで就労ビザを取得することができるが、アマチュアリーグでプレーする選手は、まずは学生ビザかワーホリビザを取得することになる。学生ビザは原則、月に税金の支払い義務のない450ユーロ(約5万5000円)までしか収入を得てはならないとされている。一方、ワーホリビザは上限なく収入を得ることが認められているため、アマチュアでドイツに挑戦する選手の多くがこのビザを取得している。

 特筆すべきは、ドイツのワーホリビザは定員の設定がなく、希望者には通年で発給されるので、取得が容易であるということだ。ただし、このビザは生涯に1度しか取得できない。よって、2年目からのビザをどうするか、よく考えなければいけないという注意点もある。

多くの日本人選手が在籍する4部リーグ

 ドイツではブンデスリーガ(1部、2部)以外は、ドイツサッカー協会(DFB)が運営を行っている。その中で最高位に位置する3部リーグ(08年新設)をドリッテリーガと呼び、ドイツではここまでがプロリーグという認識だ。ちなみに現在、ブンデスリーガの1部と2部には日本人が所属しているが、3部には存在しない。 

 4部リーグをレギオナルリーガと呼び、このリーグは全国に5地区存在する。合計で91チームが所属しており(各地区18チームずつで、1地区のみ19チーム)、合計11人の日本人選手がプレーしている。

 同リーグは08年から12年までは3地区のみだったため、所属していた日本人は非常に少なかった。だが、4部リーグにしてドイツの1/3の広さを移動しなくてはいけないことが経済的負担となり、経営破綻しかけるクラブが発生したため、DFBは12年より5地区への変更を決断した。そういった経緯もあり、4部自体は若干のレベルダウンとなったが、一方で各クラブの経済的負担は軽減され、所属するチーム数が増えることになった。

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著者プロフィール

1981年生まれ、東京出身。筑波大学蹴球部、群馬FCホリコシを経て2005年に渡独。ドイツではフォルトゥナ・デュッセルドルフのセカンドチームなどに所属し、アマチュアリーグでプレーしたのち、現役を引退。08年に同クラブのフロント入りし、日本デスクを立ち上げ、海外クラブの中で、広報やスポンサー営業、ホームタウン活動、スカウティング、強化、選手通訳など、さまざまなことに従事してきた。近年はドイツのプロクラブで働く「フロント界の欧州組」として、雑誌やTVを通じて情報発信を行っているほか、今年4月には中央大学の客員企業研究員にも就任している。著書に『「頑張るときはいつも今」ドイツ・ブンデスリーガ日本人フロントの挑戦』(双葉社)、『ドイツサッカーを観に行こう!ブンデスリーガxドイツ語』(三修社)。14年にドイツに設立したSETAS UG社(http://www.setags.jp/)を通じ、日独の架け橋になる活動も行っている。

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