スペインはトップレベルを維持できるか? 代表も国内リーグも課題は山積み

少しずつ着実に進んでいるバルセロナの衰退

現在のレベルは依然として高いが、少しずつ、しかし着実にバルセロナの衰退は進んでいる 【写真:ロイター/アフロ】

 今後スペインフットボール界が直面することになる大きな問題の1つは、少しずつ、しかし着実に進んでいるバルセロナの衰退だ。世界のトップ10に入る選手を何人も擁している戦力のレベルは依然として高い。だが、長年チームを支えてきた何人かのクラック(名手)は消耗を隠せない。それに執ようなまでに横パスをつなぎながら丁寧に攻撃を組み立てていた以前とは違い、今のバルセロナは縦へ急いで攻めるようになった分、かつての緻密なプレーを失いつつある。

 移籍市場の新たな動向もスペインフットボール界にとっては厄介な障害となりそうだ。中国リーグを筆頭に、MLS(米メジャーリーグサッカー)やその他新興リーグの金満クラブが仕掛ける札束攻勢により、今後はスター選手たちの関心がリーガから離れていく危険性がある。ビッグクラブについて言えば、年齢的にキャリアの終盤に差しかかっている中心選手たちの代役探しも必要になってくる。

 クラブの運営方法にも細心の注意を払わなければならない。バレンシアはピーター・リムの買収後も悪夢のような迷走を続けている。クリスティアーノ・ロナウドらを顧客に抱えるジョルジュ・メンデスのような大物代理人に振り回されるケースもあるし、税制面で優遇されてきた政府や地方自治体との“偽りの関係”も今後は当てにできない。せっかく手にした地位と名声を失いたくないのであれば、各クラブの経営者たちは自身が多くのファンやソシオ(クラブ会員)に監視されていることをよく理解した上で、決断を下す必要がある。

 17年もスペインフットボール界が取り組むべき課題は山積みだ。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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