新3強時代へ、鍵を握るのはサンパオリ? スペインリーグ前半戦 監督通信簿

旋風を巻き起こしているサンパオリ

セビージャのサンパオリ(左)は常識外れの采配でリーガに旋風を巻き起こしている 【写真:なかしまだいすけ/アフロ】

 契約問題に揺れるのはシメオネもまた同じであり、彼らはこの先数カ月が正念場となるはずだ。2カ月前まで首位にいたアトレティコ・マドリーが6位まで後退したことにより、いわゆる3強体制は崩れたと言える。そんな中で3位をキープしているのがセビージャであり、そのボスに君臨するホルヘ・サンパオリにはメディアも賛辞を惜しまない。

「サンパオリはセビージャに革命を起こした」と書いたのは『ムンド・デポルティーボ』紙だ。前任者ウナイ・エメリが築き上げたダイレクトなサッカーとは180度異なるポゼッションスタイルを短期間のうちにチームに浸透させるだけでなく、CLでは7シーズンぶりの決勝トーナメント進出を成し遂げた。序盤戦は面白みに欠けるきらいがあったが、成熟度が高まった今では「見ていて最もワクワクするチームの1つ」(『ムンド・デポルティーボ』紙)との評価を勝ち取っている。

 無類の音楽好き、なかでもロックをこよなく愛するというチリ人指揮官は、複数のシステムを使い分けるだけでなく、本来攻撃的な選手をサイドバックとして起用するなど、常識外れの采配でリーガに旋風を巻き起こしている。このまま最後まで調子を維持できれば、アトレティコ・マドリーに代わる“第3の矢”として新たな3強時代に突入するかもしれない。

指揮官が見せる知恵比べも見どころ

ホームでのバルセロナ戦、レアル・ソシエダは相手のお株を奪うパスサッカーを披露し、1−1で引き分けた 【写真:ロイター/アフロ】

 最後に、後半戦に向けてリーグをさらに盛り上げてくれるであろう3人の監督を挙げてみたい。

 まずは4位のビジャレアルを率いるフラン・エスクリバだ。マルセリーノ・ガルシアの解任を受けて、今シーズンの開幕直前にチームを託されたが、前任者が築き上げた守備組織をうまく活用。ここまで11失点はリーグ最少を誇る。さらにアレシャンドレ・パトやニコラ・サンソーネ、ロベルト・ソリアーノなど能力の高い新戦力をうまくローテーションして、ヨーロッパリーグとの両立をうまくこなしている手腕も見逃せない。12月12日の第15節ではアトレティコ・マドリーとのホーム戦で白星(3−0)を収めており、今後に対戦を控えるレアル・マドリーとバルセロナにとっては厄介な相手となりそうだ。

 そして、レアル・ソシエダとエイバルでそれぞれ就任2年目のシーズンを過ごすエウゼビオとホセ・メンディリバルの両監督からも目が離せない。前者はポゼッション、後者はショートカウンターと好対照なスタイルを志向する彼らだが、己の信念を貫くことで結果を出しているという共通点を持つ。

 11年から14年までバルセロナBを率いていたエウゼビオは昨年11月27日の第13節で古巣バルセロナと対戦した際、相手のお株を奪うパスサッカーを披露し(1−1)、“エンリケの後継者”に名乗りを上げた。7日に行われるセビージャとの一戦は、同じスタイルを志向する者同士の激突ということで、ひと時も目が離せない90分間となるだろう。

 一方のメンディリバルも、得意のショートカウンターにさらに磨きをかけて、チームを欧州カップ戦圏から勝ち点差5の8位に導いている。今季の予算がクラブ史上最高額であっても、リーグ全体では下から2番目ということを考えれば、“健闘”以上の評価が与えられてしかるべきだ。キャリア20年以上を誇る55歳のベテラン監督は、圧倒的な戦力差を前提としながらも、ジダンをはじめとする“後輩”たちにどんなサッカーで挑むのか。シーズン後半戦に突入し、多士済々の指揮官が見せる知恵比べもまた見どころのひとつである。

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著者プロフィール

1984年生まれ、徳島県生まれ。マニュアル制作会社に勤めた後、2011年夏からフットメディアに所属。J SPORTSのプレミアリーグ中継や『Daily Soccer News Foot!』などに関わり、ライター・翻訳をメインに活動する。学生時代にはバルセロナへ1年間留学。ルームメイトがアルゼンチン人だったこともあり、南米コミュニティーのなかでフットボールのイロハを学べたことが今の財産。

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