涙のルメール、3角悔やむ武豊キタサン 両雄の激闘は有馬から凱旋門賞へ

スポーツナビ

武豊が悔やむ3コーナーの攻防

無念の武豊、プレッシャーを受けた3コーナーが痛かった 【写真:中原義史】

 一方、最後の最後に苦杯をなめる結果となったが、2016年の日本競馬の“顔”と言えば、それはもうキタサンブラックに他ならない。

「残念。惜しかったですね。いいタイミングで差し返したかと思ったけど……全部勝つのは難しい。でも今年はよく頑張ってくれました」

 ファン投票1位の期待に応えるべく、1枠1番から飛び出した武豊とキタサンブラックもまた、マルターズアポジーの2番手から“ほぼ”完ぺきなレースを展開していた。この“ほぼ”というのは、たった1つの出来事が、結果的にキタサンブラックのスタミナを奪ってしまったからだ

「想定していた通りのレースでした。ただ、3コーナーでサトノノブレスに突っつかれたのが痛かった。あのワンプレーですね。これも組織力の差かな(笑)」

 サトノノブレスはその名前からも分かるとおりサトノダイヤモンドと同じオーナーで、所属する厩舎も同じ池江厩舎。武豊が振り返ったとおり、3コーナーからサトノノブレスが仕掛け気味にペースを上げて、キタサンブラックにプレッシャーをかけている。何も卑怯だ、と言いたいわけではない。同じ馬主、厩舎ならば当然のチームプレーであると思うし、今回はそれが見事に決まったということ。これもまた競馬だ。

「凱旋門賞は合っているんじゃないか」

今年3度目の「まつり」を熱唱した北島オーナー(左から3人目)にとっても、キタサンブラックと過ごした2016年はかけがえのない1年となった 【写真:中原義史】

 そして、そんな“サトノ包囲網”の中で勝利一歩手前まで踏ん張ったキタサンブラックは「負けて強し」を証明している。有馬記念の結果は世代交代だったが、それがそのまま来年の勢力図を表しているとも思えない。キタサンブラックは来年も変わらず現役最強の一角として、日本競馬の顔として、縦横無尽に走ってくれるはずだ。それは日本にとどまらず、世界が舞台という可能性もある。レース後に今年3度目の「まつり」を熱唱したオーナーの北島三郎さんが、2017年の展望を期待感いっぱいに語ってくれた。

「本当に良く頑張ってくれました。武豊さんもさすがです。ゴール直前は勝ったかなと思ったけど、相手も強かったし、2キロの斤量差もあったかな。これも勝負の世界ですよ。来年の凱旋門賞? キタサンブラックに合っているんじゃないか、ってオレは思うんだよねぇ。先行力があるし、いい勝負してくれるんじゃないかと思っているんです。日本代表として勝ちたいねぇ(笑)」

 馬のローテーションに関しては清水久詞調教師をはじめ厩舎に一任しているという北島オーナー。全権委任されている清水久調教師も、ジャパンカップ後には凱旋門賞の夢を語っていた。順調に行けば、サトノダイヤモンド同様に、凱旋門賞挑戦の可能性はグッと高くなる。そして、北島オーナーは競馬ファンに向けて、こんな言葉を送って締めくくった。

「競馬ファンの皆さんにはキタサンブラックをこんなに応援してもらえて、愛してもらえて、本当に幸せです」

 歌手がそうであるように、競走馬もまた、ファンの声援を受けて1つ、また1つと大きくなる。キタサンブラックの2016年はまさにそうした1年だった。さあ、来年は今年以上の応援と愛を送ろう。きっとキタサンブラックはさらに強くなり、競馬ファン、そしてサブちゃんにもっともっと大きな夢を見せてくれるに違いない。

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 ちなみに、本当にどうでもいい話だとは思いますが、僕個人の有馬記念の夢馬券はヤマカツエース3連単1頭軸勝負。マルチで絨毯爆撃作戦だったので3着でもいい、と思っていたら結果はご存知の通り4着……倒れそうになりました。そんなわけでスポーツナビ競馬をキタサンブラックのように愛してくれた競馬ファンの皆さま、2016年も本当にありがとうございました。より良いサイト作りと読み応えのあるコラム、そして当たる予想を目指してまいりますので、来年も変わらぬご愛顧のほどをよろしくお願いいたします。

(取材・文:森永淳洋/スポーツナビ)

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