遅れてきた“みうみま”世代の新ヒロイン
「草食系」早田ひなに目覚めた闘争心

大舞台で優勝を逃した悔しさ

世界ジュニア、団体戦の試合に臨む早田
世界ジュニア、団体戦の試合に臨む早田【提供:ITTF/アフロ】

 日々の積み重ねは着実に実を結び、グランドファイナルのダブルス優勝も、世界ジュニア選手権からの連戦というハードスケジュールの中で達成された。なにしろ世界ジュニア選手権は8日間の長丁場である上、開催地のケープタウンまでは東京から飛行機で20時間以上かかる。ケープタウンからグランドファイナルの開催地ドーハまでも10時間以上の長距離移動だ。しかも早田は世界ジュニア選手権の最終日まで勝ち残り、混合ダブルスと女子ダブルスの決勝を戦い、メダルセレモニーに出た後すぐに空港へと急いだ。


「相当疲れていたし、右膝を痛めていたので歩くのもつらそうでした。でも、そこであえて休養を取らず、日本にいるトレーナーと相談して適切なトレーニングを行いました。それができたのは日々のトレーニングのおかげだと思いますし、早田自身、『負けて悔しい思いをするのはイヤだ』という思いが強かったからです」


 彼女の闘志に火をつけたのは、世界ジュニア選手権で優勝を逃した女子ダブルスと複合ダブルスの悔しさだったという。早田自身、2つの試合を終えた直後、「自分のミスもあって、思い切り攻撃できないところがあった」と後悔の念を口にしていた。

「その悔しさを抱えたままドーハに入ったので、心の持ちようが違っていた」と石田コーチ。生まれ持った性格もあって、あまり闘志をむき出しにするタイプではない早田のことを「草食系」と揶揄(やゆ)する石田コーチは、「食事は肉食なんだから、プレーも肉食系になってくれればいいのに、なんで草食系なんだ!」と冗談まじりに笑う。

 しかし、このユーモアの裏にある指導者の切なる願いは、今シーズンを締めくくるグランドファイナルの大舞台でかなえられることとなった。

黄金世代の代表争いへ 磨き上げる心、体、技術

し烈を極める黄金世代の代表争い。遅れてきたヒロインの存在感が、日に日に強くなっている。写真は6月の荻村杯出場時
し烈を極める黄金世代の代表争い。遅れてきたヒロインの存在感が、日に日に強くなっている。写真は6月の荻村杯出場時【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 早田の世代は選手層が厚く、卓球界の黄金世代と呼ばれている。「みうみま」以外にもライバルはごまんとおり、世界ジュニア女子シングルスで3位に入った加藤美優(17歳・吉祥寺卓球倶楽部)やグランドファイナル女子ダブルスで早田と優勝した浜本由惟(18歳・JOCエリートアカデミー)らはその筆頭。そして、福原愛や石川佳純らスター選手がそうであるように、ジュニア世代の彼女たちもまた、卓球経験者の父親か母親の影響で競技を始めている。


 ところが早田は両親とも卓球とは無縁。4歳の時、石田コーチの実家である石田卓球クラブ(福岡県北九州市)でラケットを握ったという異色の経歴を持つ。「はじめは僕の母、次いで父、そして息子である僕が彼女の指導を引き継ぎました」との石田コーチの話は、クラブを上げて早田を育てた石田家と早田との強い結びつきを物語っている。


「本人も自分がどれだけ大切に育てられてきたかを自覚していて、お世話になった人たちに恩返しをしたいと思っています。グランドファイナルで膝が痛んだ時も、『感謝しなきゃいけない人の顔を思い浮かべて戦おう』と僕と確認し合って試合に臨みました。そういう心の通い合いは気持ちが通じているからこそかもしれませんね」


 精神面と体力面に加え、技術面の強化にも余念がない。目下、取り組んでいるのは卓球台の上で球を打つ台上技術だ。その一つとして昨年から磨いてきたチキータ(バックハンドで強い回転をかける打法)は、早田のレシーブの球種を増やした。そうした課題を一つ一つクリアし、まもなく迎える2017年は世界ランキングを10位台に安定させるというのが早田の目の前の目標。2018年にはトップ10入りを目指している。

 そして、大きな目標はやはり、2020年東京五輪に出場すること。憧れの大舞台で手にするのは、もちろん光り輝く金色のメダルと決めている。

高樹ミナ
高樹ミナ

スポーツライター。千葉県出身。 アナウンサーからライターに転身。競馬、F1、プロ野球を経て、00年シドニー、04年アテネ、08年北京、10年バンクーバー冬季、16年リオ大会を取材。「16年東京五輪・パラリンピック招致委員会」在籍の経験も生かし、五輪・パラリンピックの意義と魅力を伝える。五輪競技は主に卓球、パラ競技は車いすテニス、陸上(主に義足種目)、トライアスロン等をカバー。執筆活動のほかTV、ラジオ、講演、シンポジウム等にも出演する。最新刊『転んでも、大丈夫』(臼井二美男著/ポプラ社)監修他。

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