遅れてきた“みうみま”世代の新ヒロイン 「草食系」早田ひなに目覚めた闘争心
大舞台で優勝を逃した悔しさ
世界ジュニア、団体戦の試合に臨む早田 【提供:ITTF/アフロ】
「相当疲れていたし、右膝を痛めていたので歩くのもつらそうでした。でも、そこであえて休養を取らず、日本にいるトレーナーと相談して適切なトレーニングを行いました。それができたのは日々のトレーニングのおかげだと思いますし、早田自身、『負けて悔しい思いをするのはイヤだ』という思いが強かったからです」
彼女の闘志に火をつけたのは、世界ジュニア選手権で優勝を逃した女子ダブルスと複合ダブルスの悔しさだったという。早田自身、2つの試合を終えた直後、「自分のミスもあって、思い切り攻撃できないところがあった」と後悔の念を口にしていた。
「その悔しさを抱えたままドーハに入ったので、心の持ちようが違っていた」と石田コーチ。生まれ持った性格もあって、あまり闘志をむき出しにするタイプではない早田のことを「草食系」と揶揄(やゆ)する石田コーチは、「食事は肉食なんだから、プレーも肉食系になってくれればいいのに、なんで草食系なんだ!」と冗談まじりに笑う。
しかし、このユーモアの裏にある指導者の切なる願いは、今シーズンを締めくくるグランドファイナルの大舞台でかなえられることとなった。
黄金世代の代表争いへ 磨き上げる心、体、技術
し烈を極める黄金世代の代表争い。遅れてきたヒロインの存在感が、日に日に強くなっている。写真は6月の荻村杯出場時 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
ところが早田は両親とも卓球とは無縁。4歳の時、石田コーチの実家である石田卓球クラブ(福岡県北九州市)でラケットを握ったという異色の経歴を持つ。「はじめは僕の母、次いで父、そして息子である僕が彼女の指導を引き継ぎました」との石田コーチの話は、クラブを上げて早田を育てた石田家と早田との強い結びつきを物語っている。
「本人も自分がどれだけ大切に育てられてきたかを自覚していて、お世話になった人たちに恩返しをしたいと思っています。グランドファイナルで膝が痛んだ時も、『感謝しなきゃいけない人の顔を思い浮かべて戦おう』と僕と確認し合って試合に臨みました。そういう心の通い合いは気持ちが通じているからこそかもしれませんね」
精神面と体力面に加え、技術面の強化にも余念がない。目下、取り組んでいるのは卓球台の上で球を打つ台上技術だ。その一つとして昨年から磨いてきたチキータ(バックハンドで強い回転をかける打法)は、早田のレシーブの球種を増やした。そうした課題を一つ一つクリアし、まもなく迎える2017年は世界ランキングを10位台に安定させるというのが早田の目の前の目標。2018年にはトップ10入りを目指している。
そして、大きな目標はやはり、2020年東京五輪に出場すること。憧れの大舞台で手にするのは、もちろん光り輝く金色のメダルと決めている。