楽天入りの細川、正捕手の座へ意欲十分 日本一5度の経験を若手へ注入だ

週刊ベースボールONLINE

投手をコントロールするのが捕手の役目

チームには正捕手の嶋がいるが、刺激を与えるだけでなく、レギュラー奪取も視野に入れる(写真はソフトバンク時代の細川) 【写真:BBM】

 楽天には長年正捕手を務めている嶋基宏という絶対的な存在がいる。それでも細川の口から出たのは“正捕手奪取宣言”。こういった競争こそがチーム力を引き上げる要因になると心得ているのだ。


――ソフトバンクは若い選手がどんどん台頭。楽天では若手選手の教育にも期待されています。

 教育の例を一つ挙げれば、柳田(悠岐)のあいさつの仕方を変えなければいけなかった。小さなことですけど、見逃してはいけないこともあるんです。あいさつ、礼儀は人として大切なものなので、そこから変えないと選手としても大きくならない。最初は、今で言う“チャラい”イメージだった(苦笑)。でも現在はチームで主力となり、侍ジャパンの一員にもなり、責任感が出てきています。僕は選手のインタビューなどをチェックするんですけど、そこでの“言葉”がどんどん変わってきている。そういう部分が見えると、こちらとしてもうれしいですよね。

――柳田選手のブレークは、内面の変化も大きいと。

 以前は配球などを考えるタイプではなかったんですけどね。それを考えるようになり、どんどんレベルアップしていると思います。でも変わるという意味では若手もベテランも関係ないと思います。例えば楽天の青山(浩二)。ほかの投手、釜田(佳直)ならフォークやスライダーを生かしながらとか、自分の特徴を分かっているんです。でも青山の場合は……。外から見ていて、なぜあれだけすごい真っすぐを投げられるのに打たれてしまうのかと、ずっと思っていました。そのあたりを本人と話してみたい。僕が青森大で、彼は八戸大(現・八戸学院大)。同じリーグの後輩ということもあるんですけどね。

――青山投手もそうですが、まずは投手陣の特徴を把握することから。

 まずはブルペンで球を受ける“対話”からですよね。それから、実際に言葉を交わしながら。ピッチャーというのは難しい“人種”ですから(苦笑)。

――「投手は我が強い」ということはよく言われます。

 そうでないと、あんなマウンドに1人で立って、腕を振ることなんてできないですよ(笑)。僕ら野手がマウンドに立てと言われたら、ピンチで150キロ近くの球を放ったり、コントロールすることなんて到底無理。自分たちにはできないことなので尊敬しますよね。そういった人たちをうまくコントロールしてあげるのが、僕ら捕手の役目です。

――これまで楽天の捕手陣を見てきて、思うことはありましたか。

 嶋を筆頭にして、今季は新人の足立(祐一)も台頭してきましたよね。今季は嶋と足立が半々くらいマスクをかぶっていた。でも、チームのことを考えれば、やはり1人の捕手がシーズン100試合以上かぶっていかないと、ピッチャーを把握できない。前回の調子がどうだったから、今回はこうしようとか考えるじゃないですか。やはり実際に球を受けるのと、外から見るのとは全然違いますから。

――それを踏まえての、入団会見での「100試合以上出場宣言」。事実上の正捕手奪取宣言でした。

 もちろんそのつもりです。ただ、嶋もデータを持っているでしょうし、僕にもデータがある。そこはチームメートとしてうまく共有していきたいですね。正捕手を争うライバルですけど、チームが勝つための仲間でもあります。嶋がどういう考え方をしているのかにも興味がありますし、僕にとっても勉強になるはず。切磋琢磨(せっさたくま)しながらチームのために戦っていきたいです。

故郷・青森に恩返しのプレーを

キャリア晩年に差し掛かっていることは本人も認めるところ。自分のすべてをチームに注ぐつもりだ 【写真:BBM】

――チームメートと言えば、西武時代には松井稼頭央選手と一緒にプレーしていますよね。

 2002年から2シーズンだけ、西武で一緒にプレーさせてもらいました。当時、稼頭央さんは遊撃手で、三遊間の深い当たりでも、スナップを利かせたスローイングでいとも簡単にアウトにしてくれました。また、二塁送球時にも僕のショートバウンドやハーフバウンドをうまく処理してくれて助けられた。そういう大先輩がチームにいることは本当に心強いです。レベルアップした野球観を教えてもらいたいですね。

――やはり、プレーする上では“野球観”が重要になると。

 選手個人個人の野球観はまったく違う場合もありますから、それはそれで面白いですよね。僕も以前はそういった意見の相違でほかの選手と口論になったこともあります。自分の信念を持つことは大事だと思いますが、「こういうものだ」と固定観念を持つこともよくない。人の意見を聞きながら、こういう考え方もあるんだと、吸収すべき部分は吸収する。そういった姿勢で取り組むことで、自分の知識の幅というものが広がっていくのだと思います。楽天の若い選手に対して、そういった手助けもしていければいいですね。

――西武といえば、来季から岸孝之投手が新加入します。

 岸とバッテリーを組んだのは07年から4シーズンですね。あれから彼も成長したはずです。昔のイメージはありますけど、新しい岸と新しいピッチングを作り上げていければと思っています。楽しみですね。

――来季は青森県で29年ぶりとなるプロ野球の一軍公式戦が開催されます(6月28日、弘前市でのオリックス戦)。当然、力が入りますよね。

 偶然ですけど、これは本当にうれしいことですよ。個人的にはプロ1年目、ファームの公式戦で1試合だけ、青森でプレーしていますが、それっきりなんです。僕は弘前市出身ではありませんが、青森での試合ではぜひスタメンでマスクをかぶり、県民の方々に恩返しのプレーを見せたいです。

――それでは最後に、東北のファン、そして楽天イーグルスのファンへ向けた「初めまして」のメッセージをお願いします。

 青森生まれの細川です。正直、ここまで長く野球をやれるとは思っていませんでしたが、まだまだやれるという自信もあります。西武で2度、ソフトバンクで3度、日本一になることができましたが、生まれ故郷がある東北のチームにこうして入団することができたわけですし、その楽天イーグルスでリーグ優勝を成し遂げ、日本一になることに大きな意味があると考えています。球場では応援していただければうれしいです。


取材・構成=富田庸

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