SNS上で選手をどう呼んでいますか? カネシゲタカシの『ぷぷぷぷプロ野球』

カネシゲタカシ

悩ましいSNS上のプロ野球選手の呼び方。呼び捨て? さん付け? ニックネーム? 迷いから編み出されたテクニックとは!? 【カネシゲタカシ】

 皆さんはツイッターやフェイスブックで、プロ野球選手をどんな風に呼んでいますか?

 オフラインの雑談なら何も考えず「呼び捨て」のケースが多いでしょう。特に男性同士の場合は「大谷すげーな」「筒香調子いいな」、このような会話が自然です。

 しかし、そんな日常会話を世界に発信するSNS時代は“プロ野球選手をどう呼ぶか”が個性のひとつとして問われます。

 これが結構気を使うんですよね。

選手の呼び捨てって偉そう!?

 例えばツイッターで野球の話題をつぶやこうとするとき、僕はいつも迷います。

「選手名を呼び捨てにするのって偉そうかな」と。

 特に実名でツイッターをやっている人、また野球関係者や野球ファンとのつながりが多い人ほど悩む機会が多いでしょう。僕もそのひとりです。気軽につぶやけるのがツイッターの魅力とはいえ、「失礼なヤツだ」といった無用な誤解を生まないためには、それ相応の気配りが必要です。

 公的な呼び方にしようと思えば“○○選手”や“○○投手”というふうに「肩書」をつければ間違いありません。ただ公的で無難なぶん、よそよそしい印象も受けます。

 そこで登場するのが“○○さん”や“○○くん”といった「敬称」付きで呼ぶ方法です。これは肩書よりも自然に聞こえるため、SNS上に限らずよく使われます。特に女性は男性よりも呼び捨てへのハードルが高いため、敬称を用いるケースが多いでしょう。ちなみに「くん」を通り越すと「きゅん」が登場するのですが、ひとまず置いておきましょう。

親密度が高い「下の名前」

 また女性は「ニックネーム」を使いこなすのが上手です。男性も、おかわり君(中村剛也/埼玉西武)、ライアン(小川泰弘/東京ヤクルト)などいろいろ駆使しますが、マッチ(松田宣浩/福岡ソフトバンク)、ギータ(柳田悠岐/福岡ソフトバンク)、ちーちゃん(金子千尋/オリックス)のように、成人男性が使うには敷居が高いタイプのニックネームも存在します。

 ちなみに“新井さん”(新井貴浩/広島)のように、もはや「さん」までがニックネームと思えるような人も…。ベテランであることに加えて、阪神・金本知憲監督が選手時代から“粗いさん”と呼んでイジッていたことなどに由来します。もはやこうなると“さかなクン”みたいなもので、固有名詞に近いのかもしれません。

 いずれにせよ「あだ名」は「敬称」よりも、選手との心理的距離が近いことをアピールする手段となります。

 そして数ある選手の呼び方のなかで、最も親しみを強調できるのは「下の名前で呼ぶ」という方法です。たとえばSMAPの木村拓哉を“キムタク”とは呼べても“拓哉”とは呼べないじゃないですか。呼んでいいのは相当親しい間柄か、熱心なファンだけ。それと同じで、例えば石川雄洋(DeNA)を「タケヒロ〜!」と叫んで愛でることができるのはDeNAファンだけに許された特権なのです。

 しかし山田哲人(ヤクルト)など侍ジャパン級の選手になると、その特権を全国民で共有できる感があります。同姓選手との区別から下の名が普及するケースも多いですが、高橋由伸監督(巨人)なども、もはやそれが下の名だと意識しないほどに“由伸”が普及しており、高橋監督と呼ぶより由伸監督と呼ぶほうが一般なほどです。

呼び捨てこそが最大の敬意

 さてここまでいろんな選手の呼び方のパターンを紹介しましたが、僕の場合は“あえて呼び捨てにしてこそ最大の敬意”だと思っています。

 スポーツ選手が引退したとたん、新聞などで“○○氏”あるいは“○○さん”などと敬称をつけて記述されるの、あれって寂しくないですか? 敬称をつけることで、かえってファンと心の距離が離れてしまうこともあるのです。

 もちろん僕も取材でお世話になった際などは「敬称」や「肩書」を使います。実際に接しているのだから当然です。しかし、それ以外の場面で野球の中の彼らに言及する際は“公人とみなしての敬称なし”が、かえって自然であり、適切じゃないかと考えています。

「いいぞ、筒香さん!」「すごいぜ、大谷投手!」みたいなのは、僕にとってはなんだかむず痒い。

フルネームで呼ぶテクニック

 しかしSNS上での敬称なしは「相手を下に見た呼び捨て」と一見区別がつきません。パッと見の印象で「なんだコイツ偉そうだな」と誤解されるも、やっぱりちょっと悔しいわけです(どないやねん)。

 そこで僕があみだしのは「フルネームで呼ぶ」というテクニックです。

「筒香」ではなく「筒香嘉智」
「大谷」ではなく「大谷翔平」

「いいぞ筒香!」と言うところを「いいぞ筒香嘉智!」と言うと歴史上の人物のような重厚感が生まれます。また相手を下に見た呼び捨てとの区別もはっきりつきます。今後僕がツイッターで選手名をフルネームで呼んでいるときは「最大限の敬意だ」と理解してください。

 このように、いろいろ面倒くさい呼称問題ですが、逆手にとって楽しむこともできます。例えば“移籍した選手は、移籍先のファンに下の名で呼ばれるようになったら一人前”みたいなバロメーターを作ってタイムラインを観察することもできるのです。

 これからもいろいろ試行錯誤しながらSNS時代のプロ野球観戦を堪能したいと思います。
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著者プロフィール

1975年生まれの漫画家・コラムニスト。大阪府出身。『週刊少年ジャンプ』(集英社)にてデビュー。現在は『週刊アサヒ芸能』(徳間書店)等に連載を持つほか、テレビ・ラジオ・トークイベントに出演するなど活動範囲を拡大中。元よしもと芸人。著書・共著は『みんなの あるあるプロ野球』(講談社)、『野球大喜利 ザ・グレート』(徳間書店)、『ベイスたん』(KADOKAWA)など。

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