バルセロナは本当に偉大なチームなのか? 采配でなく、選手の才能に依存した成功

またも成功しなかった補強

ウムティティ(左)は主力として出場機会を得ているが、今季もバルセロナの補強は成功しなかった 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 こうした試合を繰り返すたびに明らかになるのは、わずかな例外――サミュエル・ウムティティは当たり。アンドレ・ゴメスやデニス・スアレスはまだ結論を出すには早い――を除いて、今季もバルセロナの補強が成功しなかったということだ。

 今年の1月から登録が可能になったアレイクス・ビダルは戦力外とされて久しい。ルーカス・ディーニュはアルバのプレーレベルには遠く及ばず、パコ・アルカセルもいまだバレンシア時代に見せていた得点能力を発揮するチャンスを得られていない。

 ダニエウ・アウベスのユベントス移籍を止められず、マルティン・モントーヤまで放出したことも裏目に出た。右サイドバックの質の低下は、本職ではないセルジ・ロベルトがレギュラーに定着したことだけでなく、彼の代役が見つからないために3バックを採用したり、マスチェラーノをコンバートしたりする采配がよく物語っている。

 だが補強や選手売却の失敗を別にしても、現在のバルセロナから「らしさ」が見られない試合が増えていることは確かだ。時に10月29日に行われたカンプノウでのグラナダ戦のような格下相手の一戦でさえ、今のバルセロナは勝利を手にするのに苦労するようになっている。

少なくなったスペクタクルなプレー

MSNをはじめとするクラックに依存する戦い方が今後も続くのか? 【写真:ロイター/アフロ】

 今やバルセロナは以前のようにスペクタクルなプレーでわれわれを魅了することが少なくなった。現在の彼らはもっと縦に、ダイレクトに攻撃を仕掛けるチームとなり、そのパフォーマンスはイニエスタの創造性やラキティッチのハードワーク、そしてもちろんメッシのタレントに左右されるようになっている。

 現在のメッシは明確なポジションを持たず、ピッチの至る所をさまよいながらプレーしているが、以前より中盤に下がってボールを要求することが多くなった。それはまるで周囲が彼のプレーを理解できずにいた以前のアルゼンチン代表を彷彿(ほうふつ)とさせる光景である。

 GKも絶対の保障を得られているわけではない。マヌエル・ノイアー、ベルント・レノら優秀なGKを多数輩出してきた強豪国ドイツの出として将来を期待されるマルク=アンドレ・テア・シュテーゲンは、バルセロナのGKに求められる足元の巧さは申し分ない反面、クロスボールや決定的シュートへの対応において十分な安定感を示すことができていない。にもかかわらず、クラブはクラウディオ・ブラボをマンチェスター・シティに放出してしまった。

 今季のバルセロナはあらゆるタイトルを勝ち取ることができるだろうか。もちろん可能だ。メッシのような天才に加え、イニエスタら多くの“クラック”(名手)を擁するチームの可能性を否定することなどできない。

 ただ見逃してはいけないのは、彼らの最近の成功はそのほとんどがベストメンバーを構成する恐るべきクラックたちの活躍に依存しており、戦術やシステム、チームのポテンシャルを最大限に引き出すような采配が要因となっていることはほとんどないことだ。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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