鮮やかな初陣を飾った王者・キャブズ NBA開幕、新たな物語は生まれるか

杉浦大介

16−17シーズンの焦点は?

オフにデュラント(右端)を獲得したウォリアーズは、今季最大の注目チームといえる 【Getty Images】

 最後に今季のリーグ全体を占っておきたい。シンプルに、ウォリアーズとキャブズの3度目の頂上決戦が実現するかどうかが2016−17シーズンの焦点となっていくのだろう。

 6月に衝撃的な敗北を味わったウォリアーズは、オフに元MVPのケビン・デュラントを獲得。ステフィン・カリー、クレイ・トンプソン、ドレイモンド・グリーンと合わせ、史上空前の“ビッグ4”を形成するに至った。このパワーハウスのインパクトは大きく、連覇を目指すキャブズ同様、ウォリアーズこそが今季最大の注目チームであることは間違いない。

 もしもファイナルが3年連続で同じカードになれば、NBA史上初のこと。両軍はそれぞれのカンファレンスでダントツの優勝候補と目されており、全米的な注目を集める歴史的ラバーマッチ、1勝1敗後の決着戦が日の目を見る可能性は低くない。

 ただ……そんな予定調和に少々物足りなさを感じるのも事実ではある。

「ウォリアーズは去年の時点ですでにすごいチームだった。そんな背景を考えれば、デュラント獲得はリーグにとって良いことだとは思わない。今季が私のキャリアで20シーズン目になるが、開幕前に両カンファレンスでどこが勝ち抜くかを自信をもって予想できるシーズンは初めて。ドラマ不在はスポーツにとって良いことじゃない」

 元『ニューヨーク・タイムズ』紙のベテラン記者、ハワード・ベック記者がそう述べていた通り、いわゆる“トップヘビー(頂点とそれ以外の差が激しい)”の状況を快く思っていない関係者も存在する。当の選手の中にも、同じように感じている者は少なくないのではないか。ライバルチームの選手は、そんな不満、憤りをゲームでぶつけてほしいものだ。

新体制のウォリアーズには適応期間が必要

 イースタン・カンファレンスでは、昨季にチーム史上初のカンファレンス・ファイナルに進んだトロント・ラプターズ、今オフにアル・ホーフォードを獲得した名門ボストン・セルティックスに期待。ウェスタンでは、サンアントニオ・スパーズ、ロサンゼルス・クリッパーズは例年通りに好チームを作ってくるだろう。

 25日の開幕戦ではスパーズが見事なチームプレーを見せ、129−100でウォリアーズに大勝。新体制のウォリアーズにも適応期間は必要だろう。それと同時に、他の強豪チームがウォリアーズ、キャブズの撃破に執念を燃やせばシーズンはより面白くなる。

 悲願を成就させた現役最強選手の見事なスピーチで始まった2016−17シーズンは、どんな新しい物語を生みだしていくのか。“期待を裏切らない”結果には安心感があるが、一方で予定調和を壊す波乱にもスリリングな喜びがあるもの。幸福感とドラマがハイレベルで融合され、ドラマチックかつエキサイティングなNBAシーズンになっていくことを望みたいところだ。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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