菊圧勝サトノダイヤモンド、来年は凱旋門 ルメール完ぺき日本クラシック初制覇

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思い描く理想のステイヤー体型に

ルメールにとっても初の日本クラシックレース勝利となった 【スポーツナビ】

「今日が一番強かったです」

 ルメールがそう振り返ったように、クラシック三冠目にしてサトノダイヤモンドはついに持てる能力の最大限を出し切ったように思う。皐月賞は最後の直線でリオンディーズの斜行のあおりを受ける不利があり3着、ダービーは落鉄してハナ差の2着。とにかく春は不運続きの不完全燃焼だった。秋の最後の一冠こそは――。そんな執念がにじみ出るようなサトノダイヤモンドのこの日の仕上がり。池江調教師は神戸新聞杯後からこの中間、自身が理想と思い描くステイヤーの姿にサトノダイヤモンドを近づけていったという。

「もともとサトノダイヤモンドにもステイヤー資質はありましたし、中・長距離体型でしたが、よりステイヤー向きに仕上げていきました。その通り、僕が思い描いているステイヤーの体型になっていったと思います。理想とするのはメジロマックイーンでありマンハッタンカフェであったりと、歴代の名ステイヤーですね。僕が課した厳しい調教にスタッフもサトノダイヤモンドもしっかりと応えてくれました」

左から池江調教師、里見オーナー、ルメール 【スポーツナビ】

 もちろん、トレーナーがどんなに馬を完ぺきに仕上げても、ジョッキーがレースでその能力を出し切ってくれる騎乗をしてくれなければ、すべてが水の泡。その点で池江調教師は、菊花賞のルメールの騎乗を「パーフェクトでした」と手放しで絶賛している。

 賛辞を受けたルメールも、自身初の日本のクラシックレース勝利の味は格別だったようだ。喜びの気持ちを「まるで自分が子供のよう。見習いジョッキーのようです」と表現した。

「クラシックは一番大切なレースです。日本に来たときからこのレースを勝ちたかった。だから、“やった!”(笑)。すごく気持ちいい。すごく喜んでいます。家族もみんな喜んでいますし、今日はすごくいい日ですね」

年内は1戦、来年は凱旋門賞を目標に

年内は使うなら1戦、来年は凱旋門賞を最大の目標に 【スポーツナビ】

 史上最高の世代と呼ばれた2013年生まれの牡馬クラシックは、春からナンバーワンの素材と言われてきたサトノダイヤモンドが最後の一冠を制して幕を閉じた。「最も強い馬が勝つ」という格言の菊花賞だけに、晴れて名実ともに世代ナンバーワンを宣言してもいいだろうが、ダービー馬マカヒキが不在でまだ借りを返していない。池江調教師も、世代ナンバーワンと名乗るにはまだまだ早い、と首を振る。ファン目線としても、三冠を分け合ったディーマジェスティ、マカヒキ、サトノダイヤモンドがさらに互いを高めあいながら、ライバル物語をもっと、もっと熱く展開してほしいところだろう。

 そうなると次戦はどこになるのか? 池江調教師は「使うなら年内1戦」と明らかにした。

「オーナーと相談しながら決めていきたいと思います。使うんだったら有馬記念か、香港カップ、香港ヴァーズの3択ですね」

 そして、来年以降の大目標については次のようにハッキリと明言した。

「来年は、今年断念した凱旋門賞ですね。ここから逆算したローテーションを考えていきたいと思います」

 ルメールも凱旋門賞挑戦には大賛成だ。

「サトノダイヤモンドは今後も楽しみです。馬が大人になっているから別のGIレースも勝てると思う。彼のことは大好きですし、友だちみたい(笑)。凱旋門賞でももちろん乗りたいです」

 この日サトノダイヤモンドがきらめかせた輝きはまだほんの一瞬。これからますます磨かれ、研ぎ澄まされたその先――日本で、そしてフランスで、まだ日本競馬が体験したことのない未来を鮮やかに照らし出してくれるに違いない。

(取材・文:森永淳洋/スポーツナビ)

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