菊圧勝サトノダイヤモンド、来年は凱旋門 ルメール完ぺき日本クラシック初制覇
思い描く理想のステイヤー体型に
ルメールがそう振り返ったように、クラシック三冠目にしてサトノダイヤモンドはついに持てる能力の最大限を出し切ったように思う。皐月賞は最後の直線でリオンディーズの斜行のあおりを受ける不利があり3着、ダービーは落鉄してハナ差の2着。とにかく春は不運続きの不完全燃焼だった。秋の最後の一冠こそは――。そんな執念がにじみ出るようなサトノダイヤモンドのこの日の仕上がり。池江調教師は神戸新聞杯後からこの中間、自身が理想と思い描くステイヤーの姿にサトノダイヤモンドを近づけていったという。
「もともとサトノダイヤモンドにもステイヤー資質はありましたし、中・長距離体型でしたが、よりステイヤー向きに仕上げていきました。その通り、僕が思い描いているステイヤーの体型になっていったと思います。理想とするのはメジロマックイーンでありマンハッタンカフェであったりと、歴代の名ステイヤーですね。僕が課した厳しい調教にスタッフもサトノダイヤモンドもしっかりと応えてくれました」
賛辞を受けたルメールも、自身初の日本のクラシックレース勝利の味は格別だったようだ。喜びの気持ちを「まるで自分が子供のよう。見習いジョッキーのようです」と表現した。
「クラシックは一番大切なレースです。日本に来たときからこのレースを勝ちたかった。だから、“やった!”(笑)。すごく気持ちいい。すごく喜んでいます。家族もみんな喜んでいますし、今日はすごくいい日ですね」
年内は1戦、来年は凱旋門賞を目標に
そうなると次戦はどこになるのか? 池江調教師は「使うなら年内1戦」と明らかにした。
「オーナーと相談しながら決めていきたいと思います。使うんだったら有馬記念か、香港カップ、香港ヴァーズの3択ですね」
そして、来年以降の大目標については次のようにハッキリと明言した。
「来年は、今年断念した凱旋門賞ですね。ここから逆算したローテーションを考えていきたいと思います」
ルメールも凱旋門賞挑戦には大賛成だ。
「サトノダイヤモンドは今後も楽しみです。馬が大人になっているから別のGIレースも勝てると思う。彼のことは大好きですし、友だちみたい(笑)。凱旋門賞でももちろん乗りたいです」
この日サトノダイヤモンドがきらめかせた輝きはまだほんの一瞬。これからますます磨かれ、研ぎ澄まされたその先――日本で、そしてフランスで、まだ日本競馬が体験したことのない未来を鮮やかに照らし出してくれるに違いない。
(取材・文:森永淳洋/スポーツナビ)