DFBが断行した国中を巻き込む大改革 瀬田元吾、ドイツサッカー解体新書(2)
DFBの役目(2)「ボーナスシステム」
フォルトゥナに昨季まで所属し、U−17代表に選出されたミカ・ハンラース(中央)。「ボーナスシステム」が適応され、彼を輩出した地元クラブにはボーナスが支払われた 【写真:フォルトゥナ・デュッセルドルフ】
アマチュアクラブがボーナスを受け取るための条件は、まず選手がU−16〜19(女子の場合はU−17、またはU−19)の代表チームで公式戦に出場しなければならない。また、受け取る資格が得られるのは、そのタレントが過去に2年以上所属し、かつ3部リーグ以上のクラブに限られる。ボーナスの用途も明確にすることが義務付けられており、ボールやユニホーム、トレーニングマテリアルの購入に充てられ、所属する地域サッカー協会によるチェックを受けるのだ。
ボーナスの金額は、2年間所属したクラブに1200ユーロ(約14万円)、それ以降は在籍年数が1年増えるごとに500ユーロ(約6万円)ずつもらえることになっている。決して高額ではないかもしれないが、タレントを育ててくれたアマチュアクラブに対して、DFBはボーナスを支払う責任を負っているのだ。
部活動チームにも「ボーナスシステム」を
日本でも「ボーナスシステム」を導入すれば、タレントの輩出に注力する部活が出てくるかもしれない 【写真:フォルトゥナ・デュッセルドルフ】
日本の育成は部活動が中心となるが、部活では1つのチームに不特定多数の部員が所属し、チームによっては多くの補欠が存在せざるを得ない状況を生む。そのため、タレントを埋もれさせてしまう危険性を秘めている。また、中学校、高校、大学でそれぞれ結果を求めたチーム作りや指導を行ってしまうことが、一貫指導の弊害とも言われている。
日本では学校単位で部活を行うため、基本的には同じ場所で3年間(ないし4年間)プレーすることになる。各年代に適した指導を行うことさえできれば、実は選手に時間を与えながら育てることができる可能性も秘めている。ドイツでは試合に出ることが最も重要なことであり、出場経験が得られないのであれば、それが得られるチームを探すことが正しいと考えられている。私自身、この考えには大いに賛成ではあるが、それはドイツが「国として」一貫指導を徹底しているからこそである。
日本の場合、全国の部活動チームがそれぞれのカテゴリーにあるトーナメント大会の結果で評価されてしまう。これにより一貫指導ではなく、所属カテゴリーごとに完結する指導となってしまうことが問題視されがちだ。例えば、DFBの「ボーナスシステム」を参考に、例えばユース年代の代表選手を輩出した部活動チーム(出身校)に、日本サッカー協会(JFA)がボーナスを支払うようにしてもいいのではないだろうか。そうすることで、必ずしもトーナメント大会で好成績を収めることだけではなく、タレントを輩出することに注力する部活動チームが増えていく可能性も十分にあるのではないかと思う。
そのためには、JFAが目指す指導指針を、もっとしっかりと全国に浸透させていくことが不可欠だ。