女子フィギュア、勝負の鍵は演技構成点 “かつてない混戦”の今季を占う
フィンランディア杯で演技をする浅田真央 【写真:ロイター/アフロ】
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ジャンプの作戦に変化、「質」が勝負
実際には、「3回転+3回転」を無理に難しい種類の組み合わせで跳んでも、質が高くなければ得点にはつながらないし、ミスすれば大幅にマイナスされるので元も子もない。むしろジャンプは、「ショートプログラムで3本、フリースケーティングで7本」あるため、1つ1つの質を磨いて加点を積み重ねる方が、総合点は上がる。
ここ2シーズンまでは、3回転ルッツや3回転フリップなどの難しい連続ジャンプの習得に時間を費やした選手が多かった。しかし今季は五輪プレシーズンということもあり各選手とも、「苦手をなくす」よりも「得意を伸ばす」作戦へとシフトしている。今季そして五輪シーズンの女子は、ジャンプの「種類」よりも、「成功率」と「質の加点」が勝負になる。
ジャンプは成功率と質が重要。宮原知子の強みでもある 【写真:田村翔/アフロスポーツ】
本郷理華(邦和スポーツランド)は、昨季こそ成績が安定しなかったが、長身を生かした高低差のあるジャンプが持ち味だ。しっかり決まれば、GOE(技の出来映え)の加点「+2」「+3」を狙える素質があるだけに、今季は縮こまらずにぶつかっていきたい。
またシニア初参戦の樋口新葉(日本橋女学館高)は、スピード感と飛距離が抜群。空中に飛び出して行くような放物線は、男子のジャンプに近い。爆発力のあるジャンプを見せて「すごいジャンパーがジュニアから上がってきた」という印象を世界に与えるシーズンになりそうだ。
昨季の世界女王エフゲーニャ・メドベージェワ(ロシア)は、ジャンプ中に手を上げて難度を高くすることで、多くの加点を得ている。手を上げても成功率や高さが変わらないのも彼女の特徴で、今季も確実に得点を稼いでくるだろう。
大技に挑む可能性がある2人
トリプルアクセル成功経験を持つトゥクタミシェワ 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】
浅田は今季中盤から挑むかどうかが注目される。ただし目指すべきはむしろジャンプ1つ1つへの加点だろう。26歳となった今季は、けがや回転不足などのリスクを背負ってまで大技に挑戦するよりも、得意の種類のジャンプで固め、曲との一体感など熟練さを見せる方向性にシフト。大人の戦い方を見せている。
トゥクタミシェワは、15年世界選手権でトリプルアクセルを成功させたものの、昨季は成功がなかった。五輪に向けて得意技を披露するか、期待される。
アシュリー・ワグナー、グレーシー・ゴールド(共に米国)、アンナ・ポゴリラヤ(ロシア)らジャンプの「質」が高い選手は、昨季以上の上位を狙ってくるだろう。またエリザベート・トゥルシンバエワ(カザフスタン)や三原舞依(神戸ポートアイランドクラブ)ら、まだ若手だがジャンプの「成功率」を武器にする選手も、進化が期待される。
結局は、誰もが同レベルのジャンパーといえる状況。1つのミスが大きく順位に影響する激戦になることは間違いない。