混戦の中、明暗分かれるトップ4の指揮官 スペインリーグ序盤 監督通信簿
「評価しづらい」ジダンの手腕
絶大なるカリスマ性でチームをまとめ上げたジダンだが、その手腕は実に「評価しづらい」 【Getty Images】
絶大なるカリスマ性によってチームをまとめあげ、就任からわずか半年でチャンピオンズリーグ制覇を成し遂げたフランス人指揮官は、申し分ない成績を残している。今年1月の監督就任以来、リーガでは28試合を指揮して、22勝5分け1敗。78.5%という勝率は、シメオネ(64.2%)やエンリケ(76.1%)だけでなく、あのジョゼップ・グアルディオラ(76.3%)やジョゼ・モウリーニョ(76.3%)すら上回る。
しかしながら、それに見合う評価を得られているかというと、話は別だ。特に公式戦4試合連続ドローを記録した際には、現地メディアに「ミニ・クライシス」とあおられ、ジダンの手腕を問う声が浮上し始めた。それは、ジダン本人がプチ不振の原因について、「インテンシティーの不足」や「メンタルの問題」と語るだけで、具体的な解決策を提示できなかったことにも理由がある。
とはいえ、『ムンド・デポルティーボ』紙が「レアル・マドリーの危機はジダンの責任か?」との記事を掲載したように、指揮官に全責任を押し付けるのは酷かもしれない。クラブOBのミチェル・サルガドが、「レアル・マドリーには、カゼミーロがもう1人必要だ」と指摘したように、そもそも現在のチームはアンバランスな戦力のもとに成り立っていることを考慮しなければならないからだ。
実際、ジダンは夏の移籍市場で、エンゴロ・カンテ(現チェルシー)やポール・ポグバ(現マンチェスター・ユナイテッド)の獲得を強く望んでいたとされる。しかし、会長のフロレンティーノ・ペレスは首を縦に振らなかった。アトレティコ・マドリーやバルセロナが次々と補強を成立させるなかで、自らの希望を受け入れてもらえなかったジダンに落ち度はない。もちろんそれだけに、「評価しづらい」とも言えるのだ。
地元ファンの評価が二分するサンパオリ
CLでは2勝1分けと好調をキープ。リーグ戦でも3位につけるセビージャだが…… 【写真:ロイター/アフロ】
しかし一方で、『アス』紙の編集長を務めるアルフレド・レラーニョが、「セビージャファンの間では、疑念が渦巻いている」との記事をつづったように、地元ファンの評価は二分しているという。その理由は端的に言えば、「結果は出しているが、内容はイマイチ」というものである。
そもそも、サンパオリはリスキーで自由奔放な攻撃サッカーを標ぼうする監督として、セビージャにやってきた人物だ。しかし、評判どおりのサッカーを提供したのは、清武弘嗣がリーガ初ゴールを記録した開幕戦のエスパニョール戦(6−4)まで。そのゲームを境に、スペクタクルとは呼べない試合内容が続いている。
もちろん、現時点で3位という成績は評価されて然るべきだろう。就任して100日ほどで全て思い通りに進むはずもなく、良い結果を残し続けることで、パフォーマンスが向上するという好循環も期待できる。しかし「私は結果よりもアイデアを大事にするセビージャであることを望む」と宣言したのはサンパオリ自身である。だからこそ、「期待外れ」と感じ始めるファンもいるようだ。
監督の評価は結果で決まる。それは1つの真実だが、たとえポジティブな結果を残していたとしても、それだけで十分な評価は得られない。トップ4に君臨する監督ですら、そうなのだ。それは、監督業の難しさを物語っているとも言えるだろう。シーズン最終節を終えた時、果たしてスポットライトを浴びているのは誰なのか。指揮官の奮闘ぶりに、今後も目が離せない。