英国のEU離脱がF1界にもたらす影響 日本GPのカンファレンスで見えた懸念

田口浩次

F1界の本質と相反する規制の強化

ウィリアムズのチーフ・テクニカル・オフィサーのシモンズ氏も英国のEU離脱の影響を懸念した(写真は3月のバーレーンGP時のもの) 【Getty Images】

 実際、英国ビザはEU圏や英連邦圏以外の国の人にとって、現在でも非常に厳しいことで有名だ。トヨタがF1に参加していた頃、ウィリアムズと契約していたドライバーの中嶋一貴のビザは英国ではなく、ドイツで取得していた。ドイツにあるトヨタのTMGと契約していて、その契約のままウィリアムズでドライバーとしてF1に出場していたわけだ。今後、英国がEUを離脱すると、こうしたEU取得のビザは現在よりも厳しい状況に置かれることは間違いないだろう。それはシモンズ氏も同意していた。

 規制を強くすべきか緩和すべきか、まるでビジネスの世界の話を聞いているかのように、その本質は共通している。規制をかけることで守れるものもあるが、それで進歩が止まる可能性もある。一方、規制を緩和すれば弱肉強食はハッキリしてしまう。だが進歩は飛躍的に進む。現在、F1の最前線で戦うエンジニアの意見の大多数は「規制は緩和すべき」だ。彼らは世界トップレベルで争っていて、誰も2番手なんて望んでいない。2番手はセカンドベストではなく、ルーザー(敗者)だからだ。

 来年からパワーユニット(PU)のトークン制がなくなりことを踏まえ、各自動車メーカーによるPU開発競争はすでに激化している。ルールは最低限のバトルロイヤルこそ世界最高を争うF1の本質。F1はおとなしくなったと言われているが、表面に見えないだけで、水面下ではやはりF1はF1だった。そんなエンジニアたちの気概を垣間見るプレスカンファレンスでの一コマだった。

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