大阪エヴェッサがバスケ観戦を変える チームラボ総合演出で「観客参加型」に

カワサキマサシ

アプリとの連動強化で更なる向上も

チームラボ代表の猪子氏は「アプリは今後、改良していきたい」と、演出面を今後さらに向上させていく意気込みを示した 【カワサキマサシ】

 あくまでもここが出発点だが、今回の演出については見ていて物足りなさや、分かり辛さを感じた部分もあった。そのひとつは、アプリとの連動。開幕節でアプリは、試合前に「まいどくん」を光らせるためだけにしか用いられなかった。この点については猪子氏も、改良の余地があると認める。

「アプリは今後、改良していきたいと思っています。たとえば選手が交代したら、新しくコートに入った選手の情報が、リアルタイムでアプリに反映されるようにするのもそのひとつ。空間の演出もそうですし、アプリみたいなものをもっとうまく使って、初めて会場に来た人にも『また来たい』と思わせるようなものにしていきたいです」

 もうひとつ気になったのは、プロジェクションマッピングの用い方。会場の床面に映し出されるので、1階席にいるとコートになにが映っているのか分かりにくい。これについて猪子氏は、広い視野で考えていた。

「1階席からは確かに見づらいですけれど、2階席からだと全体がはっきりと見えます。今まで2階席というと、安いけれどあまり良い席とはされていませんでした。大阪エヴェッサの試合会場は1階に座ると選手が近くで見られて 2階席はコートは遠くなるけれど演出がより楽しめる。どっちが良い悪いではなく、1階と2階、それぞれに違う楽しさがあるんです」

スポーツ観戦の常識を変える

従来のスポーツ観戦の常識を超えた空間作りに挑む大阪エヴェッサ。試合のみならず、演出面にも注目していきたい 【(C)OSAKA EVESSA】

 会場が一体になる演出は、当初からクラブが望んでいたものだった。大阪エヴェッサはコラボする相手に迎えたチームラボと来る日も来る日も話し合いを重ね、時を経てようやく全体像が見えてきた。しかし開幕の日を迎えるまで、具体的な形はない。それだけに、「新しい演出の実体を(関係者に)いかに伝えるかは苦労した」と、大阪エヴェッサの安井直樹代表取締役は苦笑い交じりで言う。

「僕らも実際には見ていないので、(演出を)どう言い表すか、どうやってプロモーションするかはとても苦労しました。言葉や文章で説明しようとしても、うまく伝えられないんです(笑)。だから開幕戦に向けて、この新しい演出をプロモーションすることは充分ではなかったと思います。だけど、こうして形になって表れたので、これからは映像や写真も使えて伝えやすくなる。体験したお客さんの、口コミにも期待しています」

 観客の参加を募る仕掛けや、試合の中に演出をどう組み込んでいくかなど、まだまだ改良すべき点があることは事実。しかし裏返せば、これからの伸びしろが多いに残されているということでもある。

「新しい演出が形になったことで、ひとつの土台はできたと思っています。次はこれを、どう発展させていくか。そのためのアイデアを、次々と考えていきます。これから新たに加えていくものでは、今の段階で言えることがひとつあります。11月のホームゲームでダンスチームのbtがLEDの衣装を着て、光に包まれたパフォーマンスを披露します。これもぜひ、楽しみにしておいてください」

 大阪エヴェッサは設立当初からスポーツとエンターテインメントの融合に積極的に取り組み、bjリーグでの11年間で実績とノウハウを蓄積してきた。今季からはBリーグという新たなフィールドで、これまでに培ってきたものをさらに発展させ、進化させていく。従来のスポーツ観戦の常識を超えた空間作りに挑む大阪エヴェッサの取り組みに、今後も注目していきたい。

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著者プロフィール

大阪府大阪市出身。1990年代から関西で出版社の編集部員と並行してフリーライターとして活動し、現在に至る。現在は関西のスポーツを中心に、取材・執筆活動を行う。

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