ブンデスのフロントから日本のために―― 瀬田元吾、ドイツサッカー解体新書(1)

瀬田元吾

育成改革に成功したドイツ代表

フォルトゥナには東京五輪世代である日本人選手が3名所属している。左からアペルカンプ真大(U−17)、金城ジャスティン俊樹(トップチーム)、伊藤遼哉(U−19) 【写真:フォルトゥナ・デュッセルドルフ】

 2014年ワールドカップ(W杯)・ブラジル大会はドイツの4度目(西ドイツ時代を含む)の優勝で幕を閉じた。先のユーロ(欧州選手権)ではベスト4に終わったが、この国の成長の勢いは今もなお、とどまることを知らない。リオデジャネイロ五輪でも主力を10人近く欠きながら、準優勝という結果を残した。

 次々にタレントが出てくる今のドイツが育成改革に成功したことは、試合結果やその内容を見ても、もはや疑う余地がない。一方で日本サッカーは、A代表だけでなく各年代の代表チームもアジアで苦戦する時代を迎え、20年に開催される東京五輪に向けて、今まさに抜本的な改革が求められている。

 ただしそれは一過性の取り組みではなく、日本サッカーが今後、継続的に成長していくシステムでなくてはならない。日本サッカーは確かに飛躍的な成長を遂げてきた。しかし、世界はもっと早く進化しているのだ。

 そんな中、ヨーロッパは16−17シーズンが開幕して1カ月ほどが過ぎ、今季も多くの日本人選手たちが各地でし烈なポジション争いを繰り広げている。中でもドイツでは、1部リーグで8人、2部リーグで5人がプレーしており、日本人が所属している海外リーグとしては最も数が多い。

クラブが力を入れる日本人タレントの育成

今年、2年半のプロ契約を結んだ金城ジャスティン俊樹(左)は、フォルトゥナにとっても日本にとっても重要な存在となっていくかもしれない 【写真:フォルトゥナ・デュッセルドルフ】

 4年後の東京五輪を見据えると、私がフロントスタッフを務めるフォルトゥナ・デュッセルドルフ(以下、フォルトゥナ)に、今後の日本にとって重要な存在になっていくかもしれない選手がいる。それが、16年1月にフォルトゥナと2年半のプロ契約を結んだ金城ジャスティン俊樹(19歳)である。沖縄生まれ、沖縄育ちの日米ハーフのMFは、JFAアカデミー福島に6年間所属したのち、Jリーグを経由することなく18歳で1860ミュンヘンU−19へに入団。その1年後にフォルトゥナでプロとしてのキャリアをスタートさせた。

 1997年2月22日生まれの金城は早生まれのため、東京五輪世代の最も上の学年に属している。まだ育成年代での代表経験こそないものの、日々ドイツの猛者たちの中でトレーニングを積んでおり、米国サッカー協会も注目し始めている逸材である。

 フォルトゥナもこの若きタレントの能力を非常に高く評価し、さらなる成長に大きな期待を寄せている。しかし、クラブが力を入れている日本人タレントの育成は、この金城だけではない。今季よりU−19チームには、昨年U−17日本代表にも招集された経験を持つ伊藤遼哉(18歳)が、FCシャルケ04より新加入した。さらに1つ下のカテゴリーのU−17チームには、日本生まれ、日本育ちの日独ハーフ、アペルカンプ真大(15歳)が所属し、こちらもメキメキと頭角を現している。

 彼らを含めた東京五輪世代をしっかりと育て、フォルトゥナから日の丸を背負う選手が誕生することを目指している。ではなぜ、このドイツプロクラブが積極的に日本とのつながりを強め、日本人タレントの育成にも力を入れるようになったのか。そこには、日本サッカーに貢献したいという、私自身の強い思いがある。今回は、私のこのクラブとの出会いから現在までをご紹介しようと思う。

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著者プロフィール

1981年生まれ、東京出身。筑波大学蹴球部、群馬FCホリコシを経て2005年に渡独。ドイツではフォルトゥナ・デュッセルドルフのセカンドチームなどに所属し、アマチュアリーグでプレーしたのち、現役を引退。08年に同クラブのフロント入りし、日本デスクを立ち上げ、海外クラブの中で、広報やスポンサー営業、ホームタウン活動、スカウティング、強化、選手通訳など、さまざまなことに従事してきた。近年はドイツのプロクラブで働く「フロント界の欧州組」として、雑誌やTVを通じて情報発信を行っているほか、今年4月には中央大学の客員企業研究員にも就任している。著書に『「頑張るときはいつも今」ドイツ・ブンデスリーガ日本人フロントの挑戦』(双葉社)、『ドイツサッカーを観に行こう!ブンデスリーガxドイツ語』(三修社)。14年にドイツに設立したSETAS UG社(http://www.setags.jp/)を通じ、日独の架け橋になる活動も行っている。

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