フェアリージャパン、遠かったメダル 求められる「優等生」からの卒業

椎名桂子

「予選5位→総合8位」が意味すること

2006年からの強化策により実力は確実に向上しているが、メダルへはさらなる成長が必要だ 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 日本時間22日、すべての演技を終えた新体操日本代表「フェアリージャパンPOLA」のリオ五輪での結果は、総合8位。この結果をどう受け止めればよいのだろうか。

 少なくとも予選を5位で通過した。5位は、悪い順位ではない。「メダルを目指す」と言ってはいたものの、地力を考えれば、5位にでも入れれば御の字、それが現時点での力だった。他国のミスもあったとはいえ、そのチャンスを生かして5位にはなれる力が、フェアリージャパンにはあった。それは間違いない。

演技終盤で痛恨のミス

 ただ、予選5位と期待が膨らんだ翌日の決勝で、「いつも通りの演技」ができなかった。

 1種目目のリボン×5で、投げ受けに危ないところが何カ所かあり、なんとか落下は防いでいたものの、どこかリズムに乗り切れないまま迎えた演技終盤、一番の見せ場「4本投げ」がうまくいかず、落下。得点は16.550と、決勝進出した8チーム中最下位に沈んでしまった。

 フロアに入ってきた時の選手の表情を見る限りでは、緊張したり、硬くなったりしている様子はなかった。むしろ、「予選以上の演技をしよう」と意気込んでいるように見えた。ことによっては、その意気込みが力みにつながり、少しずつ歯車が狂ってしまったのかもしれない。

「メダルも夢ではないかも」と期待されたフェアリージャパンを、決勝進出チーム中最下位という厳しい現実にたたき落とした。あの1種目目でのミスはそんなふうに映った。

 収穫だったのは、2種目目の「フープ&クラブ」までのわずかな時間で、きっちり気持ちを立て直し、こちらでは素晴らしい演技を見せられたことだ。得点も17.650で、この種目だけの順位なら6位だった。

 ミスがなくてもさすがにメダルには届かなかったはず、と認めざるを得ないが、予選が5位だったことからも、今の日本には5〜6位程度になる力はあると考えていいだろう。

 現に、決勝での演技を見ても、かつては劣ると言われていたプロポーションはもちろんのこと、柔軟性や跳躍力など身体能力の面でも日本は見劣りしなかった。パンシェ(※編注:上体を水平にし、足を垂直に上げる技)やジャンプでの開脚度などは高いレベルにあったと思う。そういった点では、2006年から行われてきた選抜団体方式(実績にとらわれず資質のある選手を選び、団体チームとして強化していく)は、一定の成果を上げてきたと言える。それは2012年のロンドン(総合7位)、今回のリオと連続して五輪の決勝に残ることができていることからも明らかだ。

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著者プロフィール

1961年、熊本県生まれ。駒澤大学文学部卒業。出産後、主に育児雑誌・女性誌を中心にフリーライターとして活動。1998年より新体操の魅力に引き込まれ、日本のチャイルドからトップまでを見つめ続ける。2002年には新体操応援サイトを開設、2007年には100万アクセスを記録。2004年よりスポーツナビで新体操関係のニュース、コラムを執筆。 新体操の魅力を伝えるチャンスを常に求め続けている。

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