フェアリージャパン、遠かったメダル 求められる「優等生」からの卒業

椎名桂子

今のフェアリージャパンに欠けるもの

演技を終え笑顔を見せるフェアリージャパン。チームの顔とも言うべき畠山愛理(手前中央)はこの後、引退の意向を表明した 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 しかし。確かに力は付けてきているのだが、それを一番大切な団体決勝で出し切れなかった。過去最高の結果につなげることができなかった。その原因をしっかりと検証し、強化策がこのままでいいのか、を考え直すことは、2020年の東京五輪に向けて必須だろう。

 今大会を通じて感じたのは、もっと個性が出せないものだろうか、ということだ。今のフェアリージャパンは平均点の高い優等生、という印象なのだ。高いレベルできれいにまとまってはいるのだが、「このチームは強い」と感じさせるだけのインパクトにやや欠けるように思う。

 ロシアは、決勝1種目目のリボン×5で落下ミスがあり、暫定首位のスペインに0.2差を付けられるという苦しいスタートだった。しかし、2種目目のフープ&クラブで、他の追随を許さぬスーパーテクニック満載の演技をノーミスで演じ切り、18.633という突き抜けた得点を記録。あっさり逆転金メダルをもぎとり、五輪団体での5連覇を達成した。

 今大会でのスペインは予選、決勝通じてすべてノーミスの素晴らしい演技を見せていた。作品の芸術性も高く、優勝もあるのでは? と思われていた。が、ロシアの演技は「ノーミスで通せば負けるはずがない」内容で、スペインを逆転しても納得のいくものだった。

 ロシアの選手たちにも絶対に失敗できないというプレッシャーはあったはずで、その表情も硬かったが、「通しさえすれば勝てる(はず)」という自信が彼女たちにはあったのだろう。その自信が、あの土壇場でハイリスクな演技をやり切る力になるのだ。

東京五輪でメダルを獲得するために

 日本には、そこまでの力も自信もまだなかった。ミスをしてはいけない、そのうえ、自分たちのベストパフォーマンスと言えるくらいのエネルギー溢れる会心の1本が出せなければ、メダルには届きそうもないところにいた。

 そうではなく、少々硬くなっても、演技に細かいほころびがあったとしても、「やり切れれば勝てる」と思えるくらいのテクニカルな面で他を圧倒する。もしくは、かつてのブルガリアなどのようにはっきりとした世界観を描き出すような芸術性の高い演技を目指す、など。「日本といえば、あの演技!」と思い浮かべられるような個性のあるチーム作りができれば、それが「強み」となり、演技をやり切る支えとなり、メダルに近づけるのではないか。

 そのために、現在は15〜16歳くらいでフェアリージャパン入りする選手が多いが、もっと早い時期から「世界」を照準にし、団体に特化した選手を育成する必要がある。

 2010年からロシア人コーチをつけ、ロシアに学ぶ形で強化を進めてきた日本の新体操団体。しかし20年東京五輪でメダルを目指すなら、「ロシアに学ぶ」のではなく、「ロシアを超えた」と言えるような選手をジュニアからの長期計画で育て、20年には「普通にやればメダルは取れる」と思えるレベルまで演技内容を引き上げていくしかないだろう。

 4年後の今ごろは、もう東京五輪も終わろうとしているころだ。猶予はない。今回届かなかった「もう一歩」を埋めるためにやるべきこと、できることにすぐに手をつけ、変えるべきところは変え、今日から2020年東京五輪に向かってのスタートを切るしかないのだ。

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著者プロフィール

1961年、熊本県生まれ。駒澤大学文学部卒業。出産後、主に育児雑誌・女性誌を中心にフリーライターとして活動。1998年より新体操の魅力に引き込まれ、日本のチャイルドからトップまでを見つめ続ける。2002年には新体操応援サイトを開設、2007年には100万アクセスを記録。2004年よりスポーツナビで新体操関係のニュース、コラムを執筆。 新体操の魅力を伝えるチャンスを常に求め続けている。

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