【UFC】喧嘩屋ロビー・ローラーの格闘哲学 不死身の男マット・ブラウンの復活は?

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不死身の男、マット・ブラウン

不死身の男、マット・ブラウンの復活は? 【Getty Images】

 マット・ブラウン(米国)もまた、相手の魂を抜き取るような試合をする選手だ。2012年4月から2014年5月までにUFCで7連勝を飾ったブラウン。その中身を検証すると戦慄が走る。飛ぶ鳥を落とす勢いの”ワンダーボーイ”スティーブン・トンプソン(米国)を凡人化し、キャリア唯一の黒星を付けて4連勝中だったマイク・パイル(米国)、3連勝中だったジョーダン・ミーイン(カナダ)の勢いを跳ね返した。マイク・スイック(米国)はブラウンに負けた後、現役を引退してタイのプーケットに移住してジムを開いた。同じく負けたルイス・ラモス(ブラジル)も荷物をまとめて韓国に移り住んだ。

 エリック・シウバ(ブラジル)は、ギブアップでもノックアウトでもなく、ただ精根尽き果てたようにがっくりと動きを止めたところをレフェリーに助けられ、試合後は病院に着くまで起き上がることすらできなかった。文字通り、対戦相手に引導を渡すような戦いをするのが、マット・ブラウンなのだ。

 しかし、この7連勝の前の2010年には、ブラウンはUFCで3連敗を喫し、解雇の瀬戸際まで追い詰められていた。この年、3試合を戦ったブラウンは3試合とも第2ラウンドでの一本負けを喫する。特に3敗目の1カ月前には、ブラウンは双子の息子を授かっていた。つまり、子どもが2人産まれた直後の、負ければ3連敗となるという、決して負けられない試合で、ブラウンは負けたのだ。

 さらにMMAに出会う前、ブラウンには薬物に溺れ、2001年にはヘロインのオーバードーズ(過量服薬)で死の淵(ふち)に立ったこともあった。ブラウンは当時を振り返ってこう語っている。「パーティー三昧、ドラッグ漬けだったころもあったが、別に自分がそういう人間だったというわけじゃない。ただ、何をやっても極端に走ってしまうところがあるというだけのことで、むしろ自分は、ドラッグ仲間たちとも必ずしもしっくりいっていなかった。ほかにやることがなかったとか、真面目に生活する動機がなかったとか、そんな理由が強かっただけかもしれない」。

 薬物中毒による瀕死(ひんし)の状態から、ブラウンは復活してきた。UFCで3連敗し、解雇の危機に立たされた後も、ブラウンはそこから復活して7連勝した。人生も試合も、まさにニックネームの”イモータル(不死身)”そのものの戦いぶりなのだ。

地獄の少し先をのぞき見る

 そんなブラウンも、実はここ4戦は1勝3敗と奮っていない。前戦は5月にブラジルで行われた「UFC 198」でダミアン・マイア(ブラジル)に完封負け。しかもバックステージではかつての柔術コーチでジムの共同経営者でもあったホドリゴ・ボッチとひと悶着(もんちゃく)を起こすなど、身内のもめ事で練習環境もおぼつかない様子が見て取れる一幕もあった。

 そんなブラウンも、現在ではデンバーのチーム・エレベーションに所属し、ここを新しい本拠地としてトレーニングに取り組むようになっている。「UFC 201」カウントダウン番組に出演したブラウンは、「今は腰を据えて地獄のような練習をしている。いつも大体、自分を地獄まで追い込んで、そこからもう少し先まで行くようにしているんだ。そして、試合でも同じことをしてやるんだ」と語っている。ここから再び始まる、“イモータル”の過激な復活劇に期待しよう。

「UFC 201」の模様は日本時間7月31日(日)7時30分より「AbemaTV」で全試合完全生中継される。また、アーリープレリムおよびプレリムの前座試合に関してはニコニコ生放送でも生放送されることになっている。

(文:高橋テツヤ)

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