巨人、後半戦の巻き返しへ4つのポイント

鷲田康

マイコラスと杉内の戦線復帰に期待

昨季11連勝を含む13勝を挙げ、菅野との2枚看板が期待されたマイコラスが3カ月遅れの6月から戦線復帰 【写真は共同】

 このエース復活とともに、巨人の後半戦のローテーションのカギを握るのがマイコラスと杉内俊哉の戦線復帰となる。一足早く6月25日のDeNA戦(横浜)で1軍マウンドに戻ったマイコラスは、後半戦ではフル回転を託されるキーマンだ。

 昨年は11連勝を含むチーム最多の13勝を挙げ、今季も菅野との2枚エースを期待されたマイコラスだが、キャンプ中の肩の故障で約3カ月遅れの“開幕”となった。

 復帰戦では5回を投げて7安打4失点、その後の7月3日の東京ヤクルト戦、同10日のDeNA戦と前半戦は未勝利のままに終わった。ヤクルト戦では6回途中で9安打、4四球だったが2点に抑える粘投を見せたが、DeNA戦では3回5失点でKOとまだ調整不足が目立つ。

「コントロールが定まらない。それに尽きる」

 本人はこう反省点を自覚。昨年も初勝利まで約2カ月かかったスロースターターだけに、今後の修正がカギとなりそうだ。

昨年10月に右股関節形成手術を受けた杉内。2軍ではシート打撃に登板するなど8月中旬の復帰へ向けて順調な調整を見せている 【写真は共同】

 一方の杉内は昨年10月に右股関節の形成手術を受けてリハビリに取り組んできたが、後半戦の復帰を目標に3軍戦から実戦復帰を果たしている。1軍での登板は順調にいっても早くて8月中旬ぐらいとなりそうだが、ペナントも佳境に入るその時期にベテラン左腕投入となれば、チームにとっては大きな力になりそうだ。

宮國の抜擢で“新勝利の方程式”機能

勤続疲労が見られる山口の代役として“新勝利の方程式”に抜擢された宮國。ここまで2点台前半の防御率をキープするなど安定した投球を披露している 【写真は共同】

 3つ目のポイントは新勝利の方程式の確立にある。

 原辰徳前監督時代は、右腕のマシソンと左腕の山口鉄也が絶対的な存在として中継ぎに君臨。クローザーへのつなぎ役として確実に勝ちゲームを手中に収める役割を果たしてきた。ところが昨年はこの2人で13敗(クローザーの澤村拓一まで含めると16敗)と勝てる試合を落としたのが結果的にはV逸の最大要因となってしまった。

 中でもここ数年、勤続疲労が見られるのがスーパーセットアッパーだった山口だ。今季も序盤は勝ち試合のセットアッパーとして起用されたが、以前のような結果が出なかったことで、6月からは配置転換。そこで新たに山口の代役として抜擢されたのが右腕の宮國椋丞だ。

 キャンプ前には先発を希望していたマシソンをいち早く中継ぎに専念させたように高橋監督の基本は、後ろから組み立てる野球。この宮國からマシソン、澤村という“新勝利の方程式”が6月からは機能し始めているのは、監督にとっても明るい材料となるだろう。後半戦も7回以降のこの3人の活躍が勝負の大きなカギを握るのは間違いないところである。

投手陣を支える小林誠の存在

捕手・小林は同級生・菅野との相性の良さや若手投手陣を引っ張るリードと巨人投手陣に欠かせない存在。意外性のある打撃でもチームを救う 【写真は共同】

 そして最後のカギは女房役の小林誠司捕手の復帰である。

 阿部慎之介の右肩故障で今季開幕からマスクをかぶる小林誠に対して、高橋監督の評価は低くない。リーグ1の強肩に加えて、同級生エース・菅野との息もぴったり。加えて今季は田口麗斗、今村信貴の両左腕など先発陣に抜擢された若手を引っ張るリード面でも著しい成長を見せている。

 その小林誠が左肩を骨折したのが6月16日の東北楽天との交流戦だった。その後、小林誠を欠いた13試合は5勝8敗と負け越したが、再び戦線復帰した7月8日からのDeNA戦に3連勝とチームもリズムを取り戻した。

 打率的には2割前後をウロウロと決してバットには大きな期待はできない数字ながら、復帰3戦目の5回の第3打席では起死回生の同点3ランを放つなど、その“意外性”の打撃も捨てがたい。

 右肩故障の阿部の捕手復帰がしばらくは難しそうなことからも、巨人の要は小林誠にかかることになる。この小林誠が正捕手として後半戦もマウンドのピッチャーを引っ張っていく存在になることも、後半戦のヨシノブ巨人の隠れたポイントと言えるだろう。

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著者プロフィール

1957年埼玉県生まれ。慶應義塾大学卒業後、報知新聞社入社。91年オフから巨人キャップとして93年の長嶋監督復帰、松井秀喜の入団などを取材。2003年に独立。日米を問わず野球の面白さを現場から伝え続け、雑誌、新聞で活躍。著書に『ホームラン術』『松井秀喜の言葉』『10・8 巨人VS.中日 史上最高の決戦』『長嶋茂雄 最後の日。1974.10.14』などがある。

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