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ゴルフで相次ぐ五輪辞退の行方
金メダルより重いメジャータイトル

スコットが代弁したトッププロの本音

最初にリオ五輪出場辞退を表明したアダム・スコット。「五輪よりもメジャータイトル獲得を優先したい」との理由は男子プロゴルファーたちの本音に近いと言える
最初にリオ五輪出場辞退を表明したアダム・スコット。「五輪よりもメジャータイトル獲得を優先したい」との理由は男子プロゴルファーたちの本音に近いと言える【Getty Images】

 かつて、「オリンピックは参加することに意義がある」というピエール・ド・クーベルタン男爵の言葉が五輪精神として尊重される時代があった。スポーツを通じて世界の友好親善を促進するという崇高な理念だ。今もこの言葉にシンパシーを感じる人も多いだろう。


 ところが、ことゴルフに関しては、ここに来て世界ランカーのプロの多くが、まるで「オリンピックに参加する意義はない」という考え方に傾いている気がしてならない。


 女子ゴルファーはともかくとして、男子は、五輪出場辞退を表明するプロゴルファーが日に日に増えているからだ。


 最初にリオ五輪出場辞退を表明したのは、2013年のマスターズチャンピオン、アダム・スコット(オーストラリア)だった。理由は「ゴルフトーナメントの過密スケジュールの中で、五輪よりもメジャータイトル獲得を優先したい」というものだ。スコットにとって、メジャーと五輪を天秤にかけたとき、メジャータイトルの方が金メダルより、ずっと重いということだ。


 昨年、一昨年と2年連続で日本オープンに出場したスコットは、石川遼と松山英樹が同オープンに欠場していることに触れ、自国のナショナルオープンに参加する意義を強調していただけに、今年4月に表明された彼の五輪辞退は意外であった。しかし、スコットの考え方は、世界ランキング上位で五輪への参加資格を満たす男子プロゴルファーたちの本音に近いと言ってもいいものだろう。

続出するタイトルホルダーの辞退

 4月のマスターズで、オーガスタナショナルに集まった世界の有力ゴルフ団体が、五輪の金メダリストに対して、メジャーへの出場権を与えると表明したものの、トップクラスの選手にとってメジャーの切符はほぼ約束されているだけに、その権利にはそれほどの魅力はない。


 スコットの五輪辞退に続いて、フィジーのビジェイ・シンが、そして南アフリカの2人の強豪、ルイ・ウェストヘーゼン、シャール・シュワーツェルらも辞退を表明。いずれもメジャータイトルホルダーだ。


 5月に入ると、スコットの五輪辞退でオーストラリア代表として繰り上げ出場が濃厚になったマーク・リーシュマンが、ジカ熱の懸念があると出場辞退を表明。その後もジカ熱を理由とする辞退者が続出する。


 5月初旬には「20年後に振り返ったとき、金メダルが人生最高の偉業になるかもしれない」と、リオ五輪への意欲を見せていた北アイルランドのローリー・マキロイが「家族の安全を優先したい」として、6月22日にジカ熱の懸念から出場辞退を表明すると、同郷のグレアム・マクドウェルと南アフリカのブランデン・グレイスもやはりジカ熱を理由に辞退を発表した。


 ジカ熱は、妊娠中の女性が感染すると、小頭症の子供が生まれる可能性があるとされている感染症だ。女性には脅威となる病気にもかかわらず、不思議なことに、女子選手からは五輪辞退の発言はなく、むしろ出場を目指して熾烈(しれつ)な争いを繰り広げている。そう考えると、男子選手の出場辞退は、PGAツアーの過密スケジュールが大きな要素になっていると考えるのが妥当だろう。

久保田千春

1948年東京生まれ。長らく週刊ゴルフダイジェストでトーナメント担当として世界4メジャーを始め国内外の男子ツアーを取材。91年から今も続く週刊ゴルフダイジェストの連載「ノンフィクションファイル」を立ち上げ担当して編集作業を行う傍ら自らも執筆。フリーとなった今も同連載に寄稿している。2007年にアマチュアだった石川遼のツアー優勝以後、石川勝美氏の依頼により「バーディは気持ち」の編集作業を担当し、その過程で石川家と親しく交流するようになった。それが縁となり武蔵野千のペンネームで週刊ゴルフダイジェスト連載の「遼くん日記」の原作を08年から12年まで執筆。現在は同誌で「迷ったとき、ユハラにかえれ!」を執筆中。91年に当時のツアーオブジャパンの依頼で日本ゴルフ雑誌記者協会を創立し、ゴルフダイジェストを退職した08年まで同協会会長を務める。また、ここ20年ほど世界ゴルフ殿堂に委嘱されインターナショナル部門の選考も行っている。

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