スコットランド戦で輝いた若き戦士たち 19年ラグビーW杯につなぐ経験に

斉藤健仁

SH茂野「日本代表に定着できれば」

相手ゴール前に迫る場面は多かったが、後半はノートライに抑えられた 【斉藤健仁】

 この試合でトライを挙げるなど6月のテストマッチシリーズで、日本の9番として存在感を示したのがSH茂野だった。昨年、NECからニュージーランド(NZ)に留学、クラブラグビーを経てNZでもレベルの高いオークランド代表に選出され、プレーオフ決勝でも先発として出場。当初はサンウルブズのメンバーではなかったが、サンウルブズのHCでもあるハメット氏自らが「トップリーグで活躍している」と追加招集した。

 そしてサンウルブズで研さんを積んで、初の桜のジャージーをつかみ、スコットランドとの連戦では先発として9番を背負った。茂野の魅力は、さばきの良さとパスの正確さ、そして何と言っても判断の良さだ。確実に空いている方向へパスをさばき、SH田中史朗の不在を補うには十分な活躍だった。

「まだフミさん(田中)のレベルまでではないと思っています。今回フミさんが外れてこういう経験をさせてもらえるのは本当にありがたいです。この経験を生かして日本代表に定着できれば」という茂野は「強気に仕掛けるということが、いい結果につながった」と6月の代表戦を総括した。ただ、2019年に水を向けると、「先を見るのではなく、一年一年課題を見つけて成長したい」

LO小瀧「信頼されるような選手に」

東芝での活躍が認められ、日本代表に選ばれたLO小瀧 【斉藤健仁】

 ほかにも2m以上の相手に体を張り続けたLO小瀧、FWとしては両チーム合わせて最小の177cmながらワークレイト高く働いたFL金、トライにつながる力強いランを見せたFB松田らがテストマッチレベルの舞台に立ち、自信を得つつも課題も見つけた水無月となった。

「いいところも悪いところも出たが、前に出る強度や体の当て方など課題が多すぎるので修正していきたい。キンさん(大野均)は、きつい中でも、自分の仕事をずっとやり切る。タフさ、メンタル、頭の回転とレベルが全然、違いました。今回は失敗して学んだことが多かったので、そうしないように今後は考えながら練習に取り組んでいきたい。この悔しさをバネに自分でも満足でき、ほかの選手に信頼されるような選手になりたい」(小瀧)

「正直、勝てなかったことが悔しい。一戦目を糧にして二戦目に臨んだが、相手が落ち着いていた。自滅で失点し、悔いが残りました。サイズが小さいことが武器だと思っているので、低さを磨いていって、タックル、ブレイクダウンの精度を高めたい。アタックでもサポートだけでなくキャリアーでも前に出られるような選手になれば自分の強みを引き出せると思うので、一日一日、一年一年、しっかり積み重ねていければと思います」(金)

「最高の舞台に出られる喜びは感じていましたし、100%やろうとしましたが、自分のプレーを発揮する難しさを感じました。今回はたくさんいい経験をさせてもらいましたが、プレーに関しては一つも満足することはできませんでした。ただ、ここがゴールではないので、次を見据えて切り替えることも大事だと思います。今回の経験を財産に成長したいです」(松田)

19年W杯にどうつなげていくか?

唯一の大学生だったが、強気なプレーを見せたFB松田 【斉藤健仁】

 ただ、ラグビー界全体に、2019年の自国開催のW杯に向け、昨秋のW杯での3勝の勢いが感じられる中、スコットランドに1勝もできなかったことは残念でならない。「日本代表が一番でなければならない」と田中が苦言を呈していたが、日本代表の主力が参加するサンウルブズがスーパーラグビーに加入した影響もあり、ヘッドコーチは代行で臨み、準備期間が短いにも関わらず、チームへの合流時機が個々の選手によってまちまちだったことも事実。一方で、ホームといえど、日本はスコットランドと互角に戦うことができ、地力をつけていることは証明したと言えよう。

 残された時間はもう3年あまり。2019年に向けて時計の針は動いていく中で、サンウルブズの経験や、今回のテストマッチシリーズで出たポジティブな面を、今後の日本代表の強化につなげていかなければならない。11月のテストマッチから日本代表の指揮を執るジェイミー・ジョセフ(現ハイランダーズHC)氏の目にはどう映ったのか。また彼の手腕が大いに試されることになろう。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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