次世代の波が押し寄せる卓球界 東京五輪へ、躍進目覚ましい中高生

平野貴也

史上最年少優勝を飾った怪物中学生

 怪物中学生に驚異の女子高生――日本卓球界は、次世代選手の台頭が目覚ましい。

 リオデジャネイロ五輪の開幕が迫る中、早くも4年後の東京五輪が楽しみになる若手選手が存在感を示している。19日まで東京体育館で行われた卓球の国際大会「ジャパンオープン」で、日本の若き至宝が躍動した。

卓球ジャパンオープンU21部門で優勝した12歳の張本。東京五輪では金メダル獲得を目標にする次世代期待の選手だ 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 男子は、怪物中学生が大物の片鱗をのぞかせた。体育館に「チョレィーッ! ヨォッ!」と気合いを込めた叫び声を響かせた、12歳の張本智和(JOCエリートアカデミー)だ。今大会は、一般と21歳以下(U21)の両部門にエントリーし、得意とするチキータ(強い回転をかけたバックハンド)を武器に奮闘。日本代表の丹羽孝希(明治大)が持っていた15歳を大きく更新するワールドツアーU21の史上最年少優勝を飾った。

 喜びに満ちた表情で「まさか優勝できるとは思わなかった。今年立てた目標は、U21でベスト4。それでもやり過ぎたかなと思ったくらい」と目をパチクリさせる表情は中学1年生のそれだが、実力は確かだ。

 初戦で第1シードと当たる厳しい組み合わせだったが、リオ五輪に出場する香港代表の世界ランク28位を破り、そのまま一気に頂点へ駆け上がった。張本は国内でいくつもの史上最年少記録を作ってきたが、国際レベルのワンダーボーイへ変貌しつつある。本人だけでなく周囲の大人も驚く成長速度だ。

東京五輪では金メダルが目標

 張本の両親はともに中国人で、父の張本宇コーチは元プロ選手(張本は、2014年に父とともに日本に帰化)だが、「小学5年生の後半くらいから、多分、私はもう負けるなと思うようになった。試合を見ていると、あれは取れないなと思うボールがある。普段の練習ではそれほどじゃないけど、試合になると気持ちが入ってすごくなる。普通は、練習が良くて試合では少し落ちるのに、逆。(自分を)超えて行っているところが、すごく嬉しい」と、ほおを緩めた。

 いくらすごいと言ってもまだ12歳――という見方は、もはや正しくない。今年4月からは日本代表合宿にも参加。一般の部は、予選3回戦で敗れたが、リオ五輪日本代表の団体戦補欠となっている大島祐哉(ファースト)を相手に第1ゲームを先取し、その後も接戦に持ち込むなど健闘した。

 日本代表男子の倉嶋洋介監督は、熱くなり過ぎるところと、フットワークを課題に挙げたが、「体回りのボールのさばき方は、最高に才能がある選手。成長期で動きの速さが間に合っていないところがまだ大きいけど、瞬間的な動き、素早さ、大きく動く力が備わってくれば、東京五輪の代表には間違いなく加わってくる選手かなと思う」と大きな期待をかけている。

 頼もしいのは、対戦した大島も「練習のときより試合がうまいなと思った」と認めた実戦での強さ。張本は大会中に「守備になったときにブロックだけじゃ絶対に勝てないと思ったので、いつもはあまりやっていないような、回り込んでフォアで打ったり、バックでも(強く)打ったりして、それが入って良かった。練習ではやっているけど、自信がないので試合で出す気はなかった。でも(それでは)勝てないので、使うしかないと思った」と話していた。

 格上相手に勝つには、主体的に攻撃を仕掛けることが絶対条件。東京五輪では、金メダルを目標にするという張本がチーム力を高める存在になりそうだ。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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